「日本人の知らない日本語3」は先々週から紹介してきた「日本人の知らない日本語」の続々巻である。
▼先々週の「日本人の知らない日本語」の記事
▼先週の「日本人の知らない日本語2」の記事
第3巻となる今作は、副題が「爆笑! 日本語「再発見」コミックエッセイ」から「祝!卒業編(コミックエッセイ)」に変わっていた。
そうだよねぇ、学校だから卒業になるよねぇ。
読んでいる方も、ちょっと嬉しくなった。
読み終わってみると、日本語を学ぶ外国の人が日本人の知らないようなことまでこんなに勉強しているのだから、日本はもっと国語教育に力を入れた方が良いように思ったが、これについては大人になって自発的にやるから良いのだろうなぁ、と思い直した。
前作、前々作と同様になかなか面白かったし、為になるところもあったのは勿論なのだが、やはりそれだけではなく、外国人が日本語を学ぶ視点だと疑問の持ち方がそもそも違っているということがよくわかった。
個人的には特にこの点が、日本語を別の観点から相対化して見るという意味でなかなか良かった。
---以下、ネタばれあり注意---
今回は漢字の書き順の話から始まった。
これは日本人でも覚え違いをしていることがあるものだが、中国人の学生によると同じ漢字で中国と書き順が違う字があると言う。
標準は人が決めているということなのだろう。
これはなかなか意外であった。
そして、わかってくるから出てくる間違いが現れる。
作品中で出てきたのは、例えば「先生は今、気分が悪い」というべき所で「先生は今、気持ち悪い」と言ってしまう場面だった。
「気持ち悪い」は吐き気がする場合にも、対象への不愉快さを示す場合にも使われる。
こういう使い分けを要する言い方は他にもある訳で、ゼロから学ぶ苦労が感じられた。
もう一つ驚いたネタは、「和洋折中」である。
「折衷」は「折中」とも書くが、これが料理の説明だったために、生徒の質問がおかしなことになった。
「和洋折中の料理」と書いてあるけれども、「和」は和食、「洋」は洋食、「中」は中華なのはわかるが「折」がわからないというのである。
はい、それは日本人にもわかりません。(笑)
全体としては、今作は終盤の授業ネタということで、手紙の書き方や面接でのマナーなど実用的な内容が増えていた印象であった。
異文化ネタで印象的だったのは「おまけ」として書いてあった、在日20年のオーストラリア人が生み出した「日本人に逃げられない話し方」。
いきなり話しかけず頭に「え~っとね」をつけるだけ!!
これは日本人もナルホドと思うねぇ。(笑)
日本語についての知識として勉強になったのは「音読みが複数ある理由」について。
訓読みは昔から日本で使われている言葉で、音読みは中国語の発音に由来する読み方であるということは第1巻で解説されている。
訓読みは日本人が当てはめたものだから複数の読み方があってもおかしくないが、中国人の学生から中国では漢字の読み方は大体一つという話を聞いて、日本語で音読みが複数あるとはこれ如何に、と海野さんは思ったそうである。
これは主に、日本にその言葉が入って来た時代によって、中国の「呉」の地方の発音が伝わってきたり、洛陽・長安周辺の音が伝わってきたりという違いがあったからであるという。
そうだったのか!
今作も面白く読めたが、これまでの三冊を通じて言葉は生き物であることが強く感じられた。
そして、日本語を一つの言語として敢えて学んでいくとこんな内容があるということが実感できた本であった。
尚、続巻の第4巻は海外編で、日本に住んでいないのに日本語を学んでいる人の話ということである。
シリーズは以下。
▼原案担当の海野凪子さんのブログはこちら