「日本人の知らない日本語」は、日本語学校で日本語を教えている海野さんの面白ネタを蛇蔵さんが漫画にしたコミックエッセイである。
2009年出版なので少し古いが、タイトルに魅かれて読んでみた。
2010年にテレビドラマ化されていたので、当時はそれなりに売れたのかもしれない。
日本人でも日本語について知らないことは沢山あるので、基本的にはこういう路線のネタを想定して読み始めた。
実際にはこの手のネタはそこまで多くはなくて、文化的な違いや外国人留学生の生活の話なども含まれていた。
また、外国人が日本語を学ぶ視点だと疑問の持ち方がそもそも違うという点が強調されており、日本語を相対化して見るという意味でも面白かった。
---以下、ネタばれあり注意---
以下、日本語学校ならではの話で印象的だったネタを幾つか紹介して終わる。
リンゴは一個、ニンジンは一本という物の数え方が沢山あるという話、敬語が難しいという話、漢字が難しいという話などは今更なので割愛する。
学校で教えるという場面での独特の難しさの一つは、なんとなくわかっていることをハッキリ説明しなくてはならないところである。
例えば、「冷める」と「冷える」の違いを生徒にきかれたら、「冷める」は熱いものが常温になることで、「冷える」は常温のものがさらに冷たくなることであると説明しなければならない。
これは案外難しいと思われた。
生徒に「立って言って下さい。」と言ったら、「た」と言われたというようなコント的なネタも挟まっている。
また、日本に来る前に日本の漫画やアニメに触れている人が多いということが書かれていて、このこと自体には驚かなったが、任侠映画や時代劇のファンの生徒のネタを読んでいると日本の側の変化の速さを感じた。
海外の日本語の教科書の会話例としてこんなのも紹介されていた。
「素敵なお召し物ですね」
「いえ、こんなのはぼろでごさいます」
「~でござる」という言い方ほど昔の感じはしないが、古臭さは感じられる。
一時の流行語よりも長い時間単位で、言い回しも少しずつ変わっているのである。
日本語についての知識として勉強になったのは「お」と「ご」の使い分けルール。
実用上は間違わないが、ルールとして説明するのは難しかった。
基本ルールは、「お」は和語(訓読み:昔から日本で使われている言葉)に付き、「ご」は漢語(音読み:中国から入ってきた言葉)に付くということだった。
だから、「母さん」は「お母さん」、「家族」は「ご家族」になるという。
そうだったのか~、と思ってしまった。
全体として「日本人の知らない日本語」というタイトル通りの内容だった印象で、文化の違いのネタなども入っていて面白く読めた。
続巻は以下。
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