100分de名著 2021年スペシャル 萩尾望都(2021年1月2日) | 日々是本日

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【公式】100分de名著:2021年スペシャル 萩尾望都

 

 「100分de名著」は各回 25分×4週 = 100分 で毎月一冊の名著を紹介するNHKの番組である。

 

 この回は1月2日のお正月特番で、作品から人物を紹介する100分番組だった。

 

 なぜ今頃紹介しているかというと、それは最近見たから……

 

 

 萩尾望都さんと言えば、「ポーの一族」などで知られる少女漫画の大御所である。

 

 生年は1949年(昭和24)なので現在72歳、未だ現役である。

 

 4月28日発売の「月刊flowers」6月号から「ポーの一族 秘密の花園」の連載が再開されている。

 


 取り上げられた作品と紹介者は下記の通りである。

第1章 「ト―マの心臓」 小谷真理(SF・ファンタジー評論家)
第2章 「半神」「イグアナの娘」 ヤマザキマリ(漫画家)
第3章 「バルバラ異界」 中条省平(フランス文学者)
第4章 「ポーの一族」 夢枕獏(作家)

 そして創作秘話についての本人インタビューもある。

 

 実のところ作品は読んでいなかったのであるが、それにもかかわらず記事しようと思ったのは、この本人インタビューでの語りが率直な感じでなかなか良かったからである。

 

 漫画家・浦沢直樹さんが同業の漫画家とインタビューをするという「浦沢直樹の漫勉」という番組があって、萩尾さんは2016年に放送されたシーズン2に出演している。

 

 この時は漫画製作の技術的な話や裏話が主であって、人物的なところがここまで伝わってこなかった。

 

▼浦沢直樹の漫勉 シーズン2 「萩尾望都」 2016年3月3日放送

 

 萩尾さんの作品には現実世界の物語と空想作品の物語の両方がある。

 

 描いている本人としては空想作品の物語が自由でいいと言う。

100%現実の話もいくつか書いたことがありますけど、

空想的な広がりがないもんでね、

書いててちょっと辛いんですよ、自分で。

 

私はもうちょっともう現実はいいです。

あの、もうちょっと遊ばせてください、空想の世界で。

 

※第3章のインタビューより引用

 ここが特に印象に残ったところで、漫画が天職のような人だと感じた。


 NHKオンデマンドで2021年12月28日まで購入可能(税込220円)なので、以下、簡単に内容を紹介しておく。

 

 

 

■第1章 「ト―マの心臓」 小谷真理(SF・ファンタジー評論家)


 「ト―マの心臓」は竹宮恵子の「風と木の詩」と並ぶ元祖BL作品と言われる作品であった。

 女性がなぜ、女性同士の恋愛ではなく男性同士の恋愛に魅かれるのかという点についての考察がなかなか興味深かった。

 

■第2章 「半神」「イグアナの娘」 ヤマザキマリ(漫画家)

 

 「半身」は16ページの短編であった。

 多数の作品の中からこの短編を選んで、ここに一個人の外面と内面のズレを見るヤマザキマリは流石である。また、外面の要素に美が含まれる女性独特の側面もある。
 もう一つの作品はドラマにもなったのでタイトルは知っていた「イグアナの娘」。
 話の内容は母子の相克物語であった。
 母子の相克物語は既に他にもあるわけだが、それを実際にイグアナの姿をした娘として視覚表現しているこの作品は斬新だ。

 紹介者がいろいろなコメントをした後で、作品についての萩尾さんの本人インタビューが流れ真相が明らかになる。

 最終ページの川にいるトカゲの意味も本人から語られる。

 この流れには内容とは別に、番組の作りとして大丈夫だろうかと思ったくらい驚いた。
 また、精神科医・斉藤環のインタビューもあり、母娘問題のかなりの構造をこの作品は書き切っていると言っていた。


■第3章 「バルバラ異界」 中条省平(フランス文学者)

 

 「バルバラ異界」は2006年のSF大賞を受賞した傑作だという。

 先に紹介した、空想の世界で遊んでいたいというインタビューもこの章のものである。


■第4章 「ポーの一族」 夢枕獏(作家)

 

 紹介者である作家の夢枕獏さんは、萩尾さん本人とも親交があるそうだ。

 推しの作品は「ポーの一族」で、夢枕さんの語りとしても観る価値があった。
 連載再開についての本人インタビューあり。

 ヤマザキマリさん即興で図解しながらの画風解説もあり。

 

■最後の萩尾さん本人のコメント

表現できるっていう手段を得られただけでも、

凄い幸福なんじゃないかと思います。

載せてくれる本があって、読んでくれる読者がいて、ホントに良かった。

ありがたいと思ってます。

 

※第4章のインタビューより引用

 ここでまた、漫画が天職のような人だと感じた。

 

 本人の人生を懸けた努力があればこその結果に、真っ直ぐ感謝するその語りがなかなか心に沁みた。

 

 

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