アービンジャー・インスティテュート「自分の小さな「箱」から脱出する方法」は、一言で言うと自己欺瞞について書いてある本である。
最近、友人と自己欺瞞についての話をする機会があったので、自己点検のために再読してみた。
この本を見るといつも思い出すことがある。
私はある時、自分自身に言い訳をしている自分に気づいた。
いつも通り言い訳をしていただけなのに、その時は愕然とした。
いつも通り自分自身に言い訳をしている自分に気づいて愕然とした。
自分自身に言い訳をしているなんて!
---以下、ネタばれありの感想---
「つまり、人間は相手が自分をどう思っているのかを感じることができる、これがポイントなんだ。」p50
なんと当たり前のポイントだろうか。
しかし、このことを忘れている自分に気づいて愕然とすることがある。
いつも通りの言い訳のように。
ここでの「箱」とはもちろん、自己欺瞞のことである。
人は現実をありのままに受け止めたくないとき、自分自身に言い訳をして自己欺瞞という「箱」に入る。
この防衛的な対処は現実を受け止めきれない時には、一時的には有効なこともあるだろう。
しかし、その中に留まり続けるのは危険である。
人は自己正当化の罠に落ちれば自己欺瞞という「箱」に入る。
この本のメッセージは実にシンプルである。
本の中身は、主人公トムが中途採用で入社した社員の研修として対話の形で進められる。
「箱」という喩えだけでなく、その図解は見えないものの具現化として実にユニークである。
内容の大半は自己欺瞞という「箱」についての説明に費やされるのだがそれを読んでいく間にまず、人の自己正当化の動機がいかに強いかということ、そして、人は自己正当化の誘惑に屈していとも簡単に「箱」に入ってしまうということが凄い納得感をもって痛感させられるのである。
最初の一割と最後の一割を除く中間の八割がこのために費やされるのは、自己正当化の動機の強さと、人はいとも簡単に「箱」に入ってしまうということを痛感しない限り、自己正当化の罠を避け、あるいは誘惑に抵抗して「箱」から出ることは難しいからであるいう考えによるものだと私は思っている。
さて、それでは「箱」から出るにはどうしたらよいのだろうか。
「目の前にいる人々が常に持っている基本的な『他者性』、つまり相手は自分と違う一個の独立した人間である」p232
「相手を、自分と同様きちんと尊重されるべきニーズや希望や心配事を持った一人の人間として見はじめたその瞬間に、箱の外に出るんだ」p232-233
なんと当たり前のことだろうか。
そして、この当たり前を忘れていることがある自分に気づいて愕然とする。
いつも通りの言い訳のように。