アジャン・ブラム「マインドフルな毎日へと導く108つの小話」
第80話 メキシコの漁師
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マインドフルな毎日へと導く108つの小話
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メキシコのある漁師の話である。
---あらすじ---
休暇でメキシコの小さな漁村を訪れていたアメリカ人が、
港で水揚げの様子を見ていた。
水揚げは思いのほか早く終わってしまった。
ビジネススクールの教授であったそのアメリカ人は、
漁師にどうしてそんなに早く仕事を切り上げるのかきいてみた。
漁師は言った。
「もう十分、獲ったからですよ。
後はこどもたちと遊んで、晩ごはんを食べたら飲み屋でテキーラを飲むんです。」
ビジネススクールの教授はアドバイスをすることにした。
「午後も漁をして元手を貯めて、大きな船で漁をすれば大金が稼げる。」
漁師は言った。
「そんな大金を何に使うんです?」
ビジネススクールの教授にとってこの質問は予想外だった。
「朝だけ漁をして、後はこどもたちと遊んで、晩ごはんを食べたら飲み屋でテキーラを飲めばいい。」
教授がこう答えると、
「だから、それが今の生活ですよ。」
そう言って漁師は帰っていった。
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本当に実話なのだろうかと思ってしまうくらい、よくできた話であるが、
価値観の違いが実に鮮明に表れている。
今の中にある幸せに気づかないで、
別の何かを求めてしまうというのも、
「何かを成し遂げたら幸せになれる」という幻想と同様に、
我々現代人の陥りやすい罠だろう。
マインドフルな心は、今の中にある。