【書評】『世界史を変えた異常気象 エルニーニョから歴史を読み解く』田家康著 | SCL トレンドアイテム研究所

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温暖化・食糧危機への警鐘

 本書に先立って上梓(じょうし)された『気候文明史』(日本経済新聞出版社)が気候変動と歴史の関わりについて通史的に紹介されたのに対し、本書では、エルニーニョという現象に由来する異常気象が世界の歴史を動かした5つのドラマに、340余の文献に基づき構成されている。

 16世紀のスペインによるインカ帝国征服、イースター島伝説、19世紀のアジアの大飢饉(ききん)と植民地支配、ドイツ軍のスターリングラード敗北、1972年の異常気象による世界食糧危機で持ち上がった食糧安全保障の課題。さらに、エルニーニョと、それが地球規模の気象に及ぼす仕組みについても触れている。エルニーニョは太平洋の東部熱帯域において、海水温度が気まぐれに変化する自然現象である。

 スペイン人が黄金郷への執念として、ペルーを征服すべく挑戦しているうちに、3回目の遠征がエルニーニョの年にあたり、それまで航行を困難にしていた海流が弱まるという幸運があった。

 ドイツ軍が1941年のロシア侵攻作戦において、酷烈な冬季に対して、あらかじめ何の準備もせず膠着(こうちゃく)状態に陥っていたところに、ロシアは極東に配備していた兵力をこの戦線に戻し、ドイツへの反撃を始めた。こうしてドイツ軍は敗退する。

エピローグでは、今後の異常気象による食糧危機に対して人類への問いかけがある。気候予測の開発が進展し、エルニーニョ由来の異常気象が1年以上も前から高い確率で予測されたとしても、社会はそれに十分に対処できるだろうか。

 19世紀のインドで、国内は飢饉にありながら農産物は購買力のある欧州諸国に輸出された。1960年代のペルーで、アンチョビーの乱獲に警鐘が鳴らされたが、外貨獲得が優先され漁獲量が激減。2006年の米国でバイオエタノール戦略が脚光を浴びると、シカゴの穀物相場が急騰、食糧を輸入する途上国に危機をもたらした。本当に人類は賢くなったか。危機に対する社会のあるべき姿を考えさせられる。





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世界史を変えた異常気象―エルニーニョから歴史を読み解く
田家 康
日本経済新聞出版社
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