【書評】『花森安治の青春』馬場マコト著 | SCL トレンドアイテム研究所

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戦争に翻弄された「反戦家」

 今年は『暮しの手帖』の創刊編集長だった花森安治の生誕100年に当たり、『花森安治戯文集』(LLPブックエンド。全3巻のうち現在2巻まで刊行)に続いてこの評伝が刊行された。

 もちろん普通の評伝として読むことも出来るがポイントは「青春」にある。

 1911年生まれの花森安治の青春は戦争に翻弄された。

 旧制松江高校(同窓に大学・社会人でも花森と深い関わりを持つジャーナリスト田所太郎がいた)、東京帝大(授業よりも帝大新聞の活動に熱心だった)を経て、画家で名図案家でもあった佐野繁次郎の引きでパピリオ化粧品の宣伝部に入った花森のもとに赤紙(召集令状)が届いたのは1937(昭和12)年11月。

 中国大陸で花森二等兵は帝国陸軍の人を人と思わない行為に衝撃を受け、自分の「人間」性を失いそうになるが、結核を患い、帰国。帝大新聞時代の先輩に呼ばれて大政翼賛会の宣伝部に入り、様々な翼賛的標語を作り、それを見事にレタリングした(「贅沢(ぜいたく)は敵だ」という有名な標語もパピリオ時代の花森の手になるものだ)。

 一方、著者・馬場マコトは1947年生まれ。つまり全共闘運動が「青春」だった。著者は言う、全共闘世代は「反権力、反戦を流行にしかできなかった薄っぺらい世代だ」と。

その著者の父親は花森と同年生まれで、だから著者は小学校3年生から『暮しの手帖』の読者で、花森の著書『一銭五厘の旗』(71年)もリアルタイムで読み、「ぼくは」という一人称単数形の潔さに感銘を受けた。全共闘のような口先だけではなくこの人は本当の反戦家だ。

 それゆえ花森が戦争中、大政翼賛会宣伝部員だったことを知り、「だまされた」と思った。

 ではこの本は単に花森の戦争責任を追及した糾弾の書だろうか。

 それは違う。自身も広告マンで広告の“意味”を熟知した、『戦争と広告』





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花森安治の青春
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