以前から速読をテーマにする本は少なからずあった。それが最近になり、”脳のしくみ”の関心とあいまって再び脚光を浴びるようになってきたように感じる。私が知っているものだけでも、フォトリーディング、フォーカスリーディングなどなど、どれが良くてどれが悪いのかもわからない。だけれども身につければ「分厚い本が10分もしないうちに読める」、「ビジネス力が上がる」など、どの方法にも魅力的な言葉であふれている。身に着けなくては「おいていかれるのか?」、「損をしてしまうのか?」と悩んでしまうかもしれない。

少し冷静になって次の2つの質問に答えてほしい。

1.ビジネス書を読む本当の目的はなんだろうか?
2.本当に速読ができたほうが良いのだろうか?


私なりの解答は以下のとおりである。(できれば読み進める前に自分なりに答えを出してほしい。)

<1.の解答>
ズバリ「ほしい情報を得ること」である。これ以外に無い。これまでも言ってきたことだが、本を読むことが目的になってしまってはいけない。近年、膨大な情報洪水の中で必要な情報をより早く得る必要性が高まってきているため、速読に焦点が当てられているだけである。速読はあくまでも目的(ほしい情報を得る)を効率的に遂行するための手段の一つでしかない。

<2.の解答>
当然Yesである。しかし、条件がひとつある。それは即効性が無くてはだめだということ。トレーニングを積む必要があり、一人前に速読ができるようになるまでに1年も2年もかかるようでは意味が無い。1.の解答でも述べたが、速読は情報を効率的に得るための手段のうちの一つに過ぎないのである。すぐに使える手段であれば使用してその成果を享受すれば良いと思うし、思うように効果が上がらないものにかじりつく必要はない。

どうだっただろうか?本を読むという目的を再確認できただろうか?そして速読にばかり注目してはいけないということを理解していただけただろうか?

では次に、速読というテーマについてどのように接すればよいかについて考えたい。本の読み方は自分にあった方法であればどんな方法でもよいと思うが、一から考えるのは大変で結局は直列に(最初から最後までただ読み進める)読んでしまいがちになるため、私の読み方を紹介したい。

基本となる考え方は2.の解答でのべたとおりである。即効性がある方法は採用し、自分に合わない方法は行わないようにしている。

1.読み始める前に全体をぱらぱらとめくる。全体のイメージを作る。
  →本の全体像をまず理解する。どういう構成か?読みやすそうかどうかをまず判断する。
2.読みたいところから読む。
  →ほしい情報がありそうな部分をまず読んでしまう。
3.読みたくなくなったらやめる。
  →いらない情報だけになったと思ったら思い切って読むのをやめる。一読して全体的にだめ
   だと感じたらそこでやめてしまう。

大雑把だが、以上が私なりの速読方法である。1.を行うと本に対するイメージができて、ほしい情報がどこにあるかがわかる。(特に海外の本、分厚い本で有効)2.と3.は1冊の本に無駄な時間をかけないための方法であり、どのようなシチュエーションでも有用である。

自分なりの読み方を確立するために大切なのは速読の方法や、その取得に気をとられないことである。本を何冊も読むようになったらときどき読み方を再確認してはどうだろうか?
皆さんは本を並列に読んでいるだろうか?直列に読んでいるだろうか?

おそらく多くの人が直列に読んでいると思う。本を直列に読むというのは1冊目を最初から最後まで読み、次に2冊目…と読み進めて行く読書法である。
では、並列に読むとは?もうお分かりだろう。何冊もの読んでいない、もしくは読み途中の本を手元に置いておき、これらを同時に読む方法で、あるときはAの本を、またあるときはBの本を読むという読書法である。

なぜ、このような読み方を紹介するのか?それはビジネス書を、しかも大量に読むのに非常に効果的だからである。簡単に本を並列に読むとどのような点で効果的かを以下に示す。

  • 常に読むべき本があることを意識させる。
説明不要。常に読んでいる本、読みたい本が目に付くところにあることで、「読まなくては!」と、(良い意味で)プレッシャーを与えることになる。
  • 情報を集めるという行為に集中できる
直列に1冊1冊読む方法だと、その本から取れる情報をとった後でも読み続けることになる。本を読むことが目的となってしまいやすい。なぜならそれしか読む本の選択肢が無いから。スタンバイ状態の本を複数もっておくことで、ほしい情報が何かを考え、上澄みのみを拾うことに努めることができる。
  • その日の気分で読むものを選べる
難解なものや読みやすいものをそろえておくことで、その日の気分によって読みたいものを読むもし1冊1冊しか読まないのであれば、難解な本を手にしたが最後、読書習慣がなくなってしまうだろう。難解な本を毎日読めるほど元気な日が続くことはないだろうから。

並列に本を読むという方法についてより詳しく知りたければ、成毛さんの「本は10冊同時に読め!」を参考にしてほしい。私は成毛さんの本のタイトルとちょうど同じで、スタンバイ状態の本が常に10冊ほどある。これは偶然であり自然にこの冊数になった。参考までに今現在の私の読んでいる本リストはこのような感じである。

<ベッドの横>
銃・病原菌・鉄〈上巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎
銃・病原菌・鉄〈下巻〉―1万3000年にわたる人類史の謎
文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (上)
文明崩壊 滅亡と存続の命運を分けるもの (下)
Oracle達人技ベスト (DB magazine selection)
決算書の暗号を解け! ダメ株を見破る投資のルール
ウォール街があなたに知られたくないこと (SBP business―パーソナルファイナンス)
ザ・キャッシュマシーン
<イラスト図解>病院のしくみ
ヤバい社会学
<カバンの中>
冒険投資家ジム・ロジャーズ世界大発見 (日経ビジネス人文庫)

私はこのスタンバイ状態の本全てに目を通してある。実際に全てを読んではいないが、”はじめに”などのさわりの部分と本の構成あたりまで読んで、スタンバイ状態としている。そのため、どのようなことが書かれているのかは大体把握している。

並列に本を読むという読書法、イメージできただろうか?興味を持ったのであれば、すぐにでも実践してもらいたいところなのだが…少し待ってほしい。

この読み方には大きな落とし穴が2つある。この2つを確認してからにしてほしい。

1.どんな本をそろえればよいのか?
2.お金が意外とかかる!

1つ目については本当に何でも良いと思う。ポイントとしては軽い内容の本(HOWTO本など)と重たい内容の本(じっくり読みたいもの)の両方をそろえることだと思う。初めのころは軽いものだけになりがちだが、ちょっと難しそうな本にもチャレンジして、常に目に付くところにおくようにしてほしい。とっつきにくかった本が突然読みやすく感じるときが来る。そして冊数だが、特にこだわる必要はない。最初は2冊でも良いと思う。ただ、1冊をじっくり読むという習慣からは抜けるべきだということだ。私はコンスタントに10冊ほど抱えるようになったが、自然にそうなったわけで、10冊が良いというわけでもない。
2つ目については非常に難しい。そう”意外とお金がかかるのだ!”。常に読む本があるので、常にハイペースで読むことになる。直列に読む方法の場合、読み終えた後、次の本を手にするまでのインターバルもあるが、並列の読書方法にはそのような期間も無いから当然である。これについては、月にいくらまでなら読書に使えるかを決めて(なるべく使えるお金を投資と思って多めに設定してほしい)その範囲でやりくりしてほしい。私は月に1万円ほどが本代になっている。ちなみに参考になるかはわからないが、勝間和代さんにいたっては月に5万円ほど本を読むというから驚きである。

並列の読書方法をより実りあるものにするために、読みたい本のアンテナを常に張ることと、読み終わったら補充ではなく、興味のある本は手当たりしだい手にし、知識に対していつまでも貪欲な姿勢をとってほしいと思う。
ザ・ゴールシリーズはどれも分厚く、書店に行っても手に取りにくく思うかもしれない。しかし、中身はどれも物語になっていて非常に読みやすい。逆に言えば、無駄な部分も含まれている。(家族との会話とかね)

企業として最も重要なこと、それは「利益を上げること」であり、それを遂行するためのよりより方法を求め、やり方を変えていくというのがシリーズに共通する部分である。どれもTOC(Theoly Of Constraints:制約理論)と呼ばれる生産管理の手法を基にしており、これを発展させ、さまざまな問題解決のための方法へと昇華させている。全ての手に取る必要は無く、(私はそれぞれの面白さがあったためほとんど読んでしまったが・・・)自分の興味のあるテーマの本を読むと良い。(PJにかかわっているのなら「クリティカルチェーン」を、営業なら「ザ・キャッシュマシーン」をといった具合に)


ザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何かザ・ゴール ― 企業の究極の目的とは何か
(2001/05/18)
エリヤフ ゴールドラット

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一番最初の作品である。後の作品全てのベースとなる本といえる。TOCという手法をもっとも詳しく説明しており、他の本を読む場合でもこれを読んでおくと理解が深まると思う。余裕があれば必読の書。
内容は1つの工場の生産性を向上させるというもの。

ザ・ゴール 2 ― 思考プロセスザ・ゴール 2 ― 思考プロセス
(2002/02/23)
エリヤフ ゴールドラット

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ザ・ゴールの続編で、ザ・ゴールの主人公が副社長になり、TOCの考え方を基に企業戦略へ応用するというもの。TOCの考え方を生産管理から問題解決方法へと発展させている。この問題解決方法について話の本筋では主人公が社外取締役(TOCの考え方を知らない)の2人に説明するという形式で進んでいく。また、同時に主人公の家族内の問題もこの問題解決方法を用いている。
本書では新しく論理ツリーと対立解消図が紹介される。この2つは人に説明するにも、問題を整理するにも非常に有効な方法といえる。(私も考えをまとめるときに使用している)


ザ・キャッシュマシーンザ・キャッシュマシーン
(2005/12/02)
リチャード・クラフォルツアレックス・クラークマン

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TOCの考え方を営業・マーケティングの分野へ適応したもの。


クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?クリティカルチェーン―なぜ、プロジェクトは予定どおりに進まないのか?
(2003/10/31)
エリヤフ ゴールドラット三本木 亮

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PJに参加している人ならば誰もが疑問に感じること。それはなぜPJが予定どおりに進まないのかということ。これをずばっと解決する本。TOCで言うところのボトルネックの強化とバッファの設置方法がメインとなる。どのPJもここで紹介される解決方法をそのまま当てはめたいところではあるが、部署間の利益や面子があるのでなかなか実践は難しいのではと思われる。(若手社員がどうこう言うレベルの話ではないため)
しかし、実践できなくてもこの考え方を知っていると自信を持ってPJに参加できるのではないだろうか。PJのポイント(頑張りどころと息の抜きどころ)を押さえるうえでも大変参考になる。


ザ・チョイス―複雑さに惑わされるな!ザ・チョイス―複雑さに惑わされるな!
(2008/11/08)
エリヤフ・ゴールドラット

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これまでのシリーズ作品の舞台裏といった本。著者ゴールドラットがいかにしてTOCという生産管理から問題解決手法へと応用していったか?その前提となるいくつかのルール(物事はシンプルであるなど)を説明する。ここでのルールとは生きていくうえでの考え方であり、人生を豊かにするものであるとしている。もっとの読んでほしい一冊。