サキの忘れ物 a lost article of Saki(津村記久子 著) | ゴルフ4年目⛳目指せ 90切!ボギーオンゴルフ

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サキの忘れ物 a lost article of Saki

津村記久子 著

新潮社

 

ダ・ヴィンチで紹介されていました!

 

雑誌 ダ・ヴィンチの「今月の絶対はずさない プラチナ本」で、サキの忘れ物 が紹介されていました。プラチナ本の記事を読むと、その本が読みたくなる魔法にかかってしまいますね。書店で、その本があると気になって気になって...。

帯、裏表紙に書かれた説明

 

見守っている。

あなたがわたしの

存在を

信じている限り。

 

ある日、千春はアルバイト先の喫茶店で客が忘れていった一冊の本を手にする。人生は、ほんとうにちいさなことで動き出す。

 

たやすくない日々に宿る僥倖のような、まなざしあたたかな短篇集。

 

アルバイト先に忘れられた一冊の本。それは誰からもまともに取り合ってもらえなかった千春がはじめて読み通した本となった。十年後、書店員となった彼女の前に現れたのは。

「サキの忘れ物」

 

前の東京オリンピック以来の来日で、十二時間待ちの展示の行列に並びはじめた主人公がその果てに出会った光景。

「行列」

 

ある晩、家の鍵をなくした私は居場所を探して町内をさまようことに。一篇のなかに無数の物語が展開!

「真夜中をさまようゲームブック」

 

 

 

レビュー

 

表題作を含む9つの短編集。

 

▶ 01. サキの忘れ物

病院に併設された喫茶店を毎日おとずれて本を読んでいる女性。高校を中退して喫茶店でアルバイトしている千春。元恋人の悠太に三股をかけられた過去。高校生の頃の唯一の友だち美結。裕福な家庭に育ち、少額の支払いに無頓着な美結。閉店後に置き忘れられた文庫本を持ち帰ってしまう千春。翌日、持ち主に「サキ」の文庫本は返却するが、本屋で同じ本を購入する千春。好きなもの、やりたいことが分からない千春。10年後...。んー『美談』ですね。本好きが増えるのは Welcomeなので、このようなお話し、好きです。

 

▶ 02. 王国

幼稚園児のソノミが命名した「ラッパムシのデリラ」。走って転んでできた傷、消毒の薬とガーゼ。傷口の王国。幼稚園児が持っている世界、ファンタジー。

 

▶ 03. ペチュニアフォールを知る二十の名所

ペンシルベニア州のパワースポット、ペチュニアフォールの紹介。20の名所を紹介しつつ...コミカルなのか、ホラーなのか...ドキドキ。ブラックでしたね。

 

▶ 04. 喫茶店の周波数

通っていた紅茶専門の喫茶店が閉店することになった。いままで喫茶店を訪れた客を思い浮かべて、ひどい客がいたかを思い出す...。喫茶店やレストランで、近くに座った人がどんな人で、どんなことをしゃべっているか、聞き耳を立てますよね?← そんなお話しです。ほのぼの。

 

▶ 05. Sさんの再訪

大学時代の友人と25年ぶりの再会。大学時代の日記を見るが、イニシャル(例:Sさん)で書かれていて、誰が誰だかわからない。そして最後は衝撃の結末に...。

 

▶ 06. 行列

無料で見れる展示物への待ち行列に並ぶ。12時間待ちの行列。「あれ」っと展示物が実際なにかは述べられず...「右から来たものを左へ受け流すの歌(By. ムーディ 勝山)」を思い出しました。もしくは、星新一さんのSF的なブラック・ショートショート。

 

▶ 07. 河川敷のガゼル

河川敷で発見されたガゼルを保護する警備員の仕事に応募。フリーランスの女性デザイナーがSNSにガゼルの画像をアップしていて、アクセス数が増えていた。テレビ番組に取り上げられたり、動物園に引き取ってもらう話が浮上したり、反対運動の署名が集まったり・・・ありそうな展開が盛りだくさん。

「ガゼルって何?」って思いながら読み進めてました。「行列」と同じ?理不尽な感じというか、カフカ的というか。多摩川にきた「ゴマフアザラシ」を思い出しました。

 

▶ 08. 真夜中をさまようゲームブック

30ページぐらいのゲームブック、指示に応じた番号をつなげて読むことでストーリーが進行する。コンビニ、ファミレス、漫画喫茶、公園など夜の街を主人公がさまよい...。なかなか楽しめる作品ですね。

 

▶ 09. 隣のビル

隣の「宝ビル」、入り口が分からない。常務が見張りをする職場で、「トイレに行く時間が長い」と叱責される。ロッカールームから宝ビルの屋上に飛び移る。そして...。日常なんだけど、不思議な物語ですね。

 

純文学あり、ファンタジーあり、ブラックユーモアありっと 色々な種類の短編が詰まったお得な短篇集でした。なるほどね、ダ・ヴィンチのプラチナ本になるわけだ。著者の感性に共感するもよし、素晴らしい筆力を絶賛するもよしっという作品ですね。