『ホイッスル』
藤岡陽子
光文社 2012年9月20日
長年連れ添った夫が自宅を売却して失踪し、途方に暮れる65歳の主人公は、周囲の人に助けられながら、新しい生活へと踏み出し、同時に夫を奪った女性を相手に裁判を起こす。
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「真面目に生きてきた人間が幸せになって、ずるい人間は報いを受ける。そんな単純な図式が存在しないことは、もうとっくにわかっていた。」
「勧善懲悪などないことはわかっていた。」
-p. 113
『不幸せの量はみんな同じ。幸せの量は人それぞれ』
-p. 215
「人生をかけて信じてきたものに裏切られた人は、心が死んでしまうんですよ。」
-p. 295
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ある日突然夫が失踪、自宅も土地も売却されていると知った主人公は、一度は絶望の淵に沈みながらも、なんとか生活を立て直し、裁判を起こす。主人公やその娘の視点のほか、裁判の相手方の女性の視点でも物語が展開するので、さまざまな事情や心情も絡み合い、作品が立体的に、奥行きをもって感じられた。
夫婦とは、家族とは、生きるとは、さまざまなことを問いかけられた気がする。
本書にも出てきたが、家賃くらいしか負担していないのに、大黒柱か家長みたいに振る舞う男性っている。以前なら、
「バカじゃないの?」
「何様?」
と思って終わりだったけど…
男性の中にも性別役割分担など、膠着した社会のシステムのせいで苦しんでいる人もいるのかも知れないという気がした。
表題が『ホイッスル』なので、学校生活やスポーツが題材の作品かと思っていたが、なるほど、そういう意味だったのね。意味がわかった時何故か鳥肌が。
芳川弁護士と亮子さんが出てくる作品が他にもあるらしい。探して読みたい。
