『縁切り上等 離婚弁護士松岡紬の事件ファイル』新川帆立

 新潮社 2023629


「切りたい縁だけスパッと切るのが、縁切りの極意」


鎌倉の「縁切り寺」の向かいに事務所を構える離婚専門弁護士、松岡紬のもとには、日々多くの離婚相談が持ち込まれる。



「つくづく結婚は変な制度だを、惚れた腫れたで付き合って結婚するのに、別れるときは子供とお金の話ばかり。性愛とお金と子育て、別々の話を結婚という一つのパッケージでまとめてしまうから、訳の分からないことになるのだ。」

-p. 192


「依頼人は結婚性に耐えられないと言っている。それを、たかが浮気ぐらい我慢しなさいとか、他人が言っていいわけがない。本人が無理というのなら、それは無理なのだ。」

-pp. 208-209


「世間では、子供が可哀想、だから同性カップルは子供を持つべきではない、といった方向に議論が進みがちだ。だがそれは個々人の選択のせいなのだろうか。単に法律が整備されていないせいで、子供が困っているだけではないか。」

-pp. 223-224



古くは女性の駆け込み寺、現代では縁切寺として有名な鎌倉のお寺の前にある離婚専門の弁護士事務所のお話。


その立地から、結婚生活にに行き詰まり、離婚を望む女性の依頼人が多く訪れる。


展開が早くて文章も読みやすく、筋立てもわかりやすいのでサクサク、サクサク進むし、身につまされるところがなければとても楽しく読めると思うが、物語を通して訴えかけてくるものは重く、大きい。



本書にもあるように、江戸時代の女性は夫から「去り状」(「離縁状」「三行半」)を書いてもらわなければ、離婚することができなかったという。


明治に入っても「試し婚」や「足入れ婚」、などのように、「嫁」が夫や舅姑の「おめがねに敵わない」場合、「家風に合わない」場合や「子を産めない」などの場合に、簡単に追い出すことのできるよう、婚姻届を出す前に「嫁」を男性の家に入れる制度があったりと、「結婚」という形を取って女性を支配し搾取する風習は根強くあったようだ。


昭和の時代になっても、会社で男性を「社畜」としてこき使い「企業戦士」として「命懸け」で「24時間」働かせるため、女性を正規雇用の市場から締め出し、家庭に縛り付けて家事や育児などのケア労働を一手に担わせるような制度が受け継がれたり、男性の補助的な役割を押し付けたり、雇用の調整弁として「使い捨て」たりするためのしくみが新たに作られたりして来た。


多様性や女性の社会進出が進む現代では、制度や社会通念が少しずつ変わって来ているようではあるが、時代に制度が追いつかないことでできた歪みのせいで苦しんでいる人もいるし、「いつの時代の人?」というような昔ながらの考えの人に出会うこともある。


どんな考えを持つのも人それぞれ、その人の自由だし、それを好ましいと思える人もいるのかもしれないが、自分の「普通」を人に押し付けることだけはやめてほしい。


誰も教えてくれなかった「離婚」しないための「結婚」の基本──女性弁護士が3000人の離婚相談で見つけた「パートナー選び」の絶対法則  後藤千絵 KADOKAWA 2021430



『モラハラ夫と食洗機弁護士が教える15の離婚事例と戦い方』堀井亜生 小学館 2023215


などと同様、必要な人に届くといいと思った一冊。