読書日記PNU屋 -526ページ目

城山英巳「中国臓器市場」

中国臓器市場中国臓器市場
城山 英巳

新潮社 2008-07


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 日本から、中国へ渡航し臓器移植を受ける人々。だが、その臓器ドナーは死刑囚だった…。日本人と海外移植の今を考えるノンフィクション。

 大変難しいテーマだ。臓器売買は違法、金銭力で現地の人よりも優先的に移植するのも倫理的に問題がある。だが、自分が、もしくは愛する家族が移植しなければ延命できないとき、国内の移植が順番待ちで遅々として進まないとしたら、海外へ目が向いてしまうのは必然の流れだろう。

 本書で驚いたのは、中国と日本の考え方や国家体制の違いだ。文化の違う国家間で移植医療を行うには、文化的軋轢が問題となってくる。移植を望む人がいるのに、自国内で需要をまかなえない日本の課
題も大きいと感じた。

p.s.98ページの事件が恐ろしい。この世で最も怖い出来事の一つだろう。

朝松健の本(★と一言)

「魔障」★★★★
魔障 (ハルキ・ホラー文庫)魔障
朝松 健

角川春樹事務所 2000-08


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 事実を下敷きにしてるあたりが超コワイ。怪の描写が迫真に迫る!

「 崑央(クン・ヤン)の女王崑央(クン・ヤン)の女王 (角川ホラー文庫)」★★★★
 クトゥルー風味の重厚なホラー。

「 肝盗村鬼譚肝盗村鬼譚」★★★

「凶獣幻野」★★★
凶獣幻野 (ハルキ文庫)凶獣幻野
朝松 健

角川春樹事務所 2000-09


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 魔術的エロス&ヴァイオレンス。

「こわがらないで…」★★★
こわがらないで… (ハルキ文庫)こわがらないで…
朝松 健

角川春樹事務所 2000-07


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 小林泰三による解説もナイス。

「邪神帝国」★★★★
邪神帝国 (ハヤカワ文庫JA)邪神帝国
朝松 健

早川書房 1999-08


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 ナチス、オカルト、クトゥルー神話のみごとな融合。巻末の魔術用語集もお役立ち。

あさのあつこ「福音の少年」

福音の少年 (角川文庫)福音の少年
あさの あつこ

角川書店 2007-06


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 妖しく美しい声を持つ少年・柏木と明帆は互いの隠し持つ心の闇に気づき、惹かれ合う。一方、二人と関係の深い少女・藍子が謎の死を遂げ、二人は彼女の死を調べ始めるが。

 「NO.6」は好みだったのだが、「透明な旅路と」はピンと来ず。本作もまた、私にとってはピンと来ないものだった。
 二人の少年の心の闇は魅力的だけれど、そこへ少女が加わったことで急によくある話に思えてしまうのだ。

 わざと狙った効果なのだろうか、彼らの内面をサラリと流し、踏み込んだ描写がないので文中にもあるように“理由もわからず”“なんとなく”アンビバレントなキャラクターに付き合っていかねばならない、そいつはしんどいことだ。私には、明帆も藍子も柏木もわからなかった。

 殺人者がTVで報道されるとき、いつかやると思ってましたなんてのは少数派で、どちらかと言えば大人しくて真面目だったのに何故? みたいな報道の方が多いような気がする。だから彼らが持つ闇は人間が普遍的に持っているものだと思うのだけど、いかが? 子供時代はとんがっているけれど、大人になるにつれて自分や世間との折り合いを付けていくもんなのではないのかな。

あさのあつこ「地に埋もれて」

地に埋もれて地に埋もれて
あさの あつこ

講談社 2006-03


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 男に埋められた優枝は、白兎と名乗る少年に助けられるが。
 優枝の人生見つめ直し物語。「透明な旅路と」に続いて白兎クンが登場する『不思議な少年』ものである。

 シリーズ前作を読んでいた方が設定の飲み込みは早いと思うが、本書から読んでもOKだろう。
 出だしは私にはきつかった。なにしろ生死の境をさまよったのだから当然かもしれないが、ヒロイン・優枝に全く感情移入出来ないのだ。優枝が切り捨てる同僚・孝美の意見の方がまっとうに思えて仕方ないのである。そこら辺も含めて、優枝が尋常ならざる精神状態にあったということだろうか。

 その後も、優枝が白兎を無礼だと怒るシーンがあるが、先に不埒な真似をしたのはどう見ても優枝の方であって、アンビバレントこの上ないのである。

 そして彼女のルーツをたどる旅はいい話ではあるが、予想圏内にオチる。少しとはいえ性描写(果たして必要だったのか?)もあるし、大人を対象とした小説だと思うのだが、展開に意外性がないところが物足りない。良く言えば王道、悪く言えばベタなよくある話というところか(ラストには驚かなければならなかっただろうか?)。
 白兎の透明感があってとらえどころのないキャラは魅力的なので続編もいちおう読みたい。

松縄正彦「よくわかる最新印刷の基本と仕組み」

よくわかる最新印刷の基本と仕組み―基礎から最新技術まで、印刷の基本を学ぶ 機能と役割 (How-nual図解入門Visual Guide Book) (How‐nual Visual Guide Book)よくわかる最新印刷の基本と仕組み―基礎から最新技術まで、印刷の基本を学ぶ 機能と役割
松縄 正彦

秀和システム 2008-12-23


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 印刷の歴史から始まって、馴染み深いインクジェットとレーザープリンタ、印刷最前線までをざっと紹介してゆく図解入門How-nual VisualGuideBookの一冊。

 なぜ私が本書を読んだかと言えば、自分が同人サークルをしており、家庭用プリンタやオフセット、オンデマンド印刷に興味があるからだった。

 おそらく私は本書のターゲットではなかったのだろう、前半はともかく、分子生物学や物理工学に言及するページは何が何やらさっぱりだった。これ、全部イメージして理解できる人いるのかなあ。
 広いジャンルの話題を扱っているだけに、わかりにくいページがあるのは仕方ないのかも。そもそも、通読を想定した本とは思えないし。ナノピコ同人サークルの自分には、2、3、7章だけで充分であった。