他の実話怪談では稀なテーマ、あやかし本であった前作に驚嘆していたら、新作は神仏特集。読んでいて背筋が伸びる一冊である。
さらに、「八朔日の花嫁」は静かな感動と、ミステリーの如き伏線回収のカタルシスがあり、著者の超自然に対する真摯な姿勢に、居住まいを正さずにはいられなかった。
印象的な話を下記に。
身固〜まえがきにかえて/人怖というのか、理解不能な人との不協和音が、不安渦巻く導入として怪奇で素敵だ。
霧の中より/ええ話や…これから時と共に、戦争怪談は語り手が失われてゆく運命ゆえ、貴重な一編であろう。
封印法/ええ話や…。この話に限らず、Tさんシリーズは他の怪談本にはあまり見かけない稀少なタイプのネタが多く、非常に興味深い。大変だろうけれど、この世ならぬ世界を一度チラ見してみたいと思ってしまう。
ゲドウ/当事者にはそれどころではないだろうが、民俗学好きにはたまらない逸話!!
道祖神祭(前)(後)/大作。前編が本の前半、後編が後半に掲載されているので、どうなっちゃうのッ?!というときめきを感じた。