宮部みゆき「昨日がなければ明日もない」 | 読書日記PNU屋

宮部みゆき「昨日がなければ明日もない」

昨日がなければ明日もない
宮部 みゆき
文藝春秋 (2018-11-29)
 

 宮部みゆきはこんなにつまらなかっただろうか…それが、本書を読み終えた私の率直な気持ちだった。

 思わずAmazonのレビューを見ると、『後味がよくない』という理由で★3つに評価しておられる方もあったが、たいていは★5つの満点である。レビューには『さすが宮部みゆき』『面白い』の文字が躍っている。

 

 いやまて、本当にそうか???

 

 実は、本書にとりあげられた事件(#1)や新キャラクター(#2)のいくつかは、5ちゃんねる(旧2ちゃんねる)の鬼女(既婚女性)板、気団(既婚男性)板でパターン化しているそれ、そのもの(#3)なのだ。

 

 アイディアに著作権はないのだし、事件もよくある事件だからかぶる…なんてこともあるのかもしれないが、とある宮部キャラが『目玉がどっかいっちゃった』(#4)と話したこと、一般的にはあまり使われない『カネコマ』(金に困っている人)などの用語を文中に見るにつれ、著者は5ちゃん(もしくはそのまとめ)見て、参考にしているのでは…なる疑惑が胸にふくらんでいった。

 

 現実の事件をまんま参考にして著作をものされる作家など枚挙にいとまがないほどだし、〈5ちゃん発祥のネタにインスピレーションを得て何の問題が?〉と思われるかもしれない。問題はそこだ。その、5ちゃんの面白さを本書が超えてくれていないことなのだ(#5)。

 

 まるで5ちゃんまとめブログを読まされているようで、肝心の主役たる杉本三郎が傍観者でしかなく、事件と事件を裏打ちするストーリーに魅力を感じることはできなかった(#5)。

 アッと言わせる面白さ、ダイナミックなストーリーはどこにもなかった、少なくとも鬼女板まとめを始終見ている自分には。

 

 もともと杉村シリーズは後味の悪いものが多いけれど、ここまでどっぷり5ちゃんねる風味だと食傷気味だ。だが、だからこそふだん5ちゃんなど触れておらず、〈鬼女板なにそれおいしいの〉な読者には、本書を面白く感じられるのかもしれない。鬼女板の面白さには、他人の不幸を蜜として味わう中毒性があるからだ(#6)。

 

 本書には5ちゃんを超える、宮部テイストが見られなかった(薄かった)のがとても残念だった。

 

 

 

 

(#1)無数のログやまとめブログがあるので、興味のある方は セコケチ クレクレ キチママ カネコマ などのキーワードでネット検索推奨。

(#2)最終章のママなんて、『カネコマ』で『セコケチ』で『クレクレ』の典型キャラ。まさにテンプレート的な『キチママ』。

(#3)結婚式の式場で新郎と元カノが…なんて事件は、まんまそのものの出来事が鬼女まとめ系のブログにある。

(#4)常識はずれな他人の言動に対し、メダマドコーーーー!、メダマポーンなどと言う、鬼女板のネットスラング。

(#5)あくまで個人の感想。

(#6)むろんそれだけではなく、5ちゃんねるにはいわゆる【電車男】的な助け合いや、集合知もある。煽りや叩きもあるのでメンタルの弱い方にはオススメできない。5ちゃんには「娘の名前を【ももこ】にしたけど古臭いかな?」のようなスレッドもあり、ぜひ杉村探偵に読んでいただきたくなってしまう。