海堂尊「ポーラースター ゲバラ覚醒」 | 読書日記PNU屋

海堂尊「ポーラースター ゲバラ覚醒」

ポーラースター ゲバラ覚醒ポーラースター ゲバラ覚醒
海堂 尊

文藝春秋  2016-06-11

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 何の事前情報もなく読んだので、まさかチェ・ゲバラ主役とは思わなんだ。ゲバラという二つ名で呼ばれる、架空人物の物語だと思い込んでいた。

 そして、ゲバラといえば革命の人、よくサッカーのゴール裏にいる人がゲバラTシャツ着てるよね、くらいの無知な人間の感想ではあるが、それにしても本書は面白くなかった。

 主人公(ゲバラ)が名家の令嬢と交際中、結婚させられそうになって、悪友と南米気まぐれ旅行に飛び出す。若く無軌道な男が主役なので、ツカミにまったく心をつかまれないまま読み進めることに。

 調べてみるとゲバラの自伝を下敷きにしているため、主人公に好感が持てないのは好みとモデルの問題でどうしようもなくあるが、それにしても本書は面白さを感じない。とにかく主人公と友人が青くて(いい加減でいきあたりばったりでワガママで)感情移入というものができない。

 そして、ああそうなの、としか思えぬラストを迎えてしまった。
 ゲバラ自伝を読んでいないから史実との差異はわからないけれど、少なくとも本書を読んで下敷きとなった自伝を読みたいとは思えないし、主人公のゲバラも最後まで好きになれなかった。

 苦いラストも、無知無謀ゆえの自業自得では?
 旧弊を打ち砕くには確かに大胆さが必要だろうけど、どうもなぁ…成長物語にしたって、受け入れ難かった。