中村仁一「大往生したけりゃ医療とかかわるな 「自然死」のすすめ」 | 読書日記PNU屋

中村仁一「大往生したけりゃ医療とかかわるな 「自然死」のすすめ」

大往生したけりゃ医療とかかわるな (幻冬舎新書)大往生したけりゃ医療とかかわるな (幻冬舎新書)
中村 仁一

幻冬舎 2012-01-28


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 ショッキングなタイトルでベストセラーとなった新書。

 がん死を薦めておきながら、その根拠が著者が勤務する施設で看取った末期がん患者が苦しまずに逝ったからだ、というのはちょっと…データが少なすぎる。
 がんになる部位を選べるのならともかく、自分では選べないわけだしね(タバコを吸いまくれば肺の上皮細胞癌か食道癌等になれるかも)。著者もその点はおさえていて、痛まないがんと痛むがんがある、と言ってるわけなんだけど、痛むのはやはりいやでしょう。

 そこいら辺はやや気になったものの、後半は一般常識ではともかく、医療者ならうすうす思っていることが、舌鋒鋭くズバズバ指摘されていくので楽しめた。
 ワクチンの功罪や検診の有効性などにも切り込んでいく本書は、近藤誠「患者はがんと闘うな」などにも似た、医療常識破壊書なんだなと思う。
 まあ病院というのは病気の人が集まるわけで、いろんなウィルスやら細菌がウジャウジャいるのは本当。MRSAみたいなコワイ菌もいることだし、軽い疾患なら自然治癒に任せるのがいいのだろう。ただ、ほっといていい病気なのかそうじゃないのかが、一般には判断しづらいところが問題だけどね。
 本書のスタンスは、いきられるところまで生きたら、あれこれ手を尽くさずに運命と思って、野生ドウブツのように息絶えようってところにあるので、まだまだ欲望や人生への未練がある人には向かないかもしれない。

 医療関連以外の、死にまつわるあれこれが意外と面白かった。陰毛をとっておくのは悪趣味だと思うけれど、エコロジーなダンボール棺桶など、お役立ち情報があって良かった。

p.s.しかし、同じ内容の繰り返しが多すぎるのは勘弁ね。