竹本健治「汎虚学研究会」 | 読書日記PNU屋

竹本健治「汎虚学研究会」

汎虚学研究会 (講談社ノベルス)汎虚学研究会 (講談社ノベルス)
竹本 健治

講談社 2012-09-06


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 部長のタマキと天才のマサムネ、一癖あるタジオと直情径行なフクスケら四人の奇妙な部活動記録短編集。
 個性ある四人のやりとりが楽しかった。掲載媒体がいろいろなためか、前半はミステリーライク、後半はホラーか純文寄りな印象。いずれにせよ、竹本作品特有の退廃的なダークな空気をたっぷりと楽しめる。
 
 最初の作品「闇のなかの赤い馬」はどこかで見たようなタイトルだなと思ったら、講談社ミステリーランド(#)で刊行されたものだった。当時新刊で買って読んだはずなのに、ちっとも覚えていないアタシ。既刊を何度でも新刊として楽しめる、エコノミーなアタマだ。

「開かずのドア」幽霊が何をしたかったのかは皆目わからないが、キュートだと思っていたものが本性をあらわすシーンは鳥肌もの。

「世界征服同好会」フクスケ大活躍。青春してて、本書の中の一服の清涼剤のような作品。

「ずぶ濡れの月光の下」トンボの話がマジで怖い。なんだかはぐらかされたような、作者の脳内ではおそらくクリアに描かれているであろう図をくもりガラス越しに見せられたような、もやもやの残る物語。

「個体発生は系統発生を繰り返す」タイトルは有名な発生学の言葉から。
 すごく言葉の喚起するイメージが豊かで、文学ちっくな世界が広がる。ただし意味不明…(私には)。


(#)闇のなかの赤い馬
闇のなかの赤い馬