ケン・フォレット No.1.5◇巨人たちの落日・下◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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主人公たちは国を越え、立場を超え邂逅する。大戦が終わってもーーー戦いはまだ終わらない!






◇巨人たちの落日・下◇ -The Century Trilogy #1 Fall of Giants-

ケン・フォレット 戸田裕之 訳



終わりの見えない戦いのさなか、ヨーロッパでは外交官とスパイが暗躍し、皇帝が倒され、労働者たちの運動が熱を帯びていく。かつてメイドとして仕えたエセルと負傷して戦地から戻ってきた伯爵フィッツにも、皮肉な運命の再会が待っていた──。生死すら分からぬまま引き裂かれたワルターとモードは、愛を貫くことができるのか。そしてロシアで革命の波にもまれる兄とアメリカでしたたかに生きる弟レフの運命は? 物語は深い感動と余韻を残すラストを迎える!



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1917年4月。遂にアメリカはドイツに宣戦布告をした。ワルターの家でもあらゆるものが徴収され、屋敷は自給自足を強いられる。ワルターは妹の友人モニカとの結婚話を退ける。臨時政府を弱体化される為にはレーニンたちボルシェヴィキの力が必要だ。ドイツは密かに帰国と資金援助を行う。



1917年5月。レフは不品行からクラブから金属工場経営に移される。折しもストライキが行われ、ガスと皮肉な邂逅を果たす。しかし不品行は留まるところを知らず、とうとうレフは出兵させられることに。そしてガスも……



1917年夏。エセルの関心は女性選挙権の獲得だ。大戦の人手不足の影響で女性が男性よりも劣っているという考えは薄らいでいる。政府は30歳以上の女性に選挙権を与える方向で妥協する。それでも大きな1歩なのにモードは何故か法案反対を呼びかける。エセルはそれを受け入れられず、袂を分かってしまう。



ロシア帝政打破の影響はフィッツにも及ぶ。ビーの兄アンドレイが大怪我をおい、ビーはロシアに行きたい、と懇願する。アンドレイに何か有ればアンドレイが管理している土地はフィッツの子どもたちが相続することになる。2人はモスクワに赴くが直後アンドレイを憎悪する農民たちによってアンドレイ夫妻は殺され、フィッツとビーは命からがら逃げる。



1917年秋、グリゴーリイはカテリーナの出産を控えながらもそれどころでは無い。反乱軍を鎮圧させ、中央委員会に選ばれた。果たして冬宮は陥落し、ボルシェヴィキが実権を握ったが。



1918年春。ワルターは再び前線へ出る。望み通りロシアは大戦から身を引いた。英国軍ともぶつかったが一昨年に奪われた領地を奪還した。今度こそ連合国に勝てると信じるが、短い間に状況が変わった。アメリカ軍の到着が早過ぎた。頭をよぎるのはーーー「休戦」。



1918年、夏。ビリーたちはウラジオストックに派遣される。ボルシェヴィキと戦うためだが英国の国会は何もしらず、任務内容は家族にも話せない。それにビリーは腹をたて、密かに行動に出る。遠いロシアで戦争が終わったことを知るが、当分帰る見込みなど無い。



1918年、冬。エセルは夫バーニーの仲をなんとか修復させ、バーニーの選挙活動とビリーの手紙を元にロシア撤退の訴えに奔走する。議会はドイツに賠償金を払わせろ、とうるさくモードはうんざりする。事実ドイツに講和条約にサインする他道が無い。国際連盟の成立の道は遠いがガスはとうとう幸せを掴む。



1919年、春。とうとうグリゴーリイとレフの兄弟は再会する。レフはグリゴーリイに送金する約束を忘れず、叶えることも出来たが2人の描く未来は違い過ぎた。もう一緒には暮らせない。グリゴーリイに出来ることはただ1つ。レフをアメリカに帰すだけ。

対照的に長く引き離されたモードとワルターはフランスで再会し、遂に結婚を公にした。2人はベルリンに住む。フィッツからの便りは無く、代わりに憂鬱な知らせばかり。



遂にビリーがエセルに情報を流していることがフィッツにバレた。ビリーは裁判にかけられるもアンドレイのことを持ち出し、死刑は免れた。10年の刑に処されたがそれも短縮されて英国に帰ることが出来た。



ーーーそして新しい戦いが始まる。



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「巨人たちの落日・下」です(・∀・)



中巻は撃ち合い、爆破し合い、殺し合い! でしたが下巻は国を超えて外交と諜報が暗躍します。この辺りになるとビリーやグリゴーリイ・レフ兄弟も国と立場が違う主人公と邂逅します。ガスやモードたちはもともと色々国を行き来していましたがこの当時は誰も彼もが強く生きなければならなかった、信念を持たねばならなかった、と強く思わされます。




ロシア帝政崩壊を目の当たりにするフィッツとビー。そこまで未来が真っ暗で無くて良かった。相変わらずフィッツはクソですが←徐々に虚勢と驕りが剥がれるところはいい気味で良いですね← 果たしてあと20年、そのままで生きていけるかな!?

一方、離れ離れだったワルターとモード。良かった、生きていて……しかしベルリン住まいなので未来は明るく有りません。ワルターがナチ党に入ったらわたしの心は死んでまう。亡命してくれ。

金ピカ上級社会も泥まみれな下級社会も行き来するレフが最後の最後まで強かですね。グリゴーリイとはボルジェヴィキになった時点でもう道は交わらないと思ったら案の定……この分だとレフは億万長者になるかアル・カポネになるか、グリゴーリイはスターリンに睨まれそう。



この物語の終盤はビリーとエセルたちのいる英国です。最後の場面が英国ならびに彼らの未来を暗示しているようです。というか多分、主人公たちの最後の登場場面は第2部への伏線です。一応これ、3部作ですから主人公では無いにしろ、全く出て来ないというのは不自然というか消化不良なので。だってここまで書かれたらさぁ、死ぬところまで見たいじゃない?! この紛れもなくあの時代を生きて生き延びて次世代に繋げようとした彼らの生き様を、わたしはもっと知りたいよ!? また神保町を彷徨わないと←



「巨人たちの落日・下」でした(・∀・)/ 

19歳の少女が殺された! その事件の一部始終に密着!(*^o^*)/