人を死なせてしまった罪の意識から立ち直りかけていた男。彼を殺したのは?
◇哀惜◇ -The Long Call-
アン・クリーヴス 高山真由美 訳
イギリス南西部の町ノース・デヴォンの海岸で死体が発見された。捜査を行うマシュー・ヴェンは、被害者は近頃町へやってきたサイモンというアルコール依存症の男で、マシューの夫が運営する複合施設でボランティアをしていたことを知る。交通事故により子供を死なせたことで心に病を抱えながらも、立ち直ろうとしていた彼を殺したのは何者なのか? 英国ミステリの巨匠が贈る端正で緻密な謎解きミステリ。
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ノース・デヴォン、バーンスタプル。父の葬式を遠くから眺めていたところで部下のロスから連絡が入る。クロウ・ポイントの海岸で男の死体が見つかったということだ。
殺された男は身分証は持っていなかったが、ポケットの買い物メモから素性が分かり始める。男の名前はサイモン。ソーシャルワーカーを勤めるキャロラインの家の下宿人だった。彼は子どもを轢き殺してアルコール依存症になり、複合施設ウッドヤードでコックのボランティアをしていたのだ。
ウッドヤードはキャロラインの父親を始めとする地元有力者の肝煎りで出来た複合施設だ。マシューの夫のジョナサンが館長を勤めていてアート教室があり、デイセンターもある。そこに通うダウン症の女性、ルーシーは生前バスでサイモンと関わりがあったことが分かる。バスでどこに行こうとしていたのか? そこからサイモンという男の動向が明らかになるがその分謎も生まれた。サイモンはもう1つ住まいを持っていた? 彼はかなりのお金を持っていた? そんな中、ルーシーの友達である同じくダウン症のクリスティンが姿を消すーーー
クリスティンは2日後に生きて見つかるがマシューはこの件とサイモン殺しが無関係だとは思えない。そしてその鍵がウッドヤードに有ることも……ジョナサンが関わる以上、捜査の指揮を降りるべきだろうか? 事件のこと、母親とのことで悩むマシューはルーシー失踪事件を機に一気に真相に近づくーーー
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「哀惜」です(・∀・)
父から借りました。英国ミステリの巨匠であり、東京創元社ではお馴染みらしい大御所が早川書房に登場! 新しい主人公を迎えて新シリーズ始動です。
1人の死、つまり一件の殺人事件の捜査過程を丁寧に書いています。人によってはものすごく退屈するし、文章力、というか作品構成力を問われますが合間合間に主人公マシューやヒロイン、ヴェンの事情や過去も明かされるので退屈しません。
昨今の海外ミステリの主人公が抱えているトラブルを、彼らも抱えています。日本と比べて世界では同性婚は認められているイメージありますけど海外ミステリ読むとあまりそうは思えない……本書は様々な家族の形を書いていて、それが事件の手がかりにもなっています。とりあえずルーシーの家族とジョナサンに幸あれ。
舞台が観光客はそこそこ来るけど閉鎖的な場所なので半ば牢獄っぽいなーと思っていましたがそれは最後に近づくにつれて強く思います。というか中盤になると犯人の予想がつきます。わたしはついてしまいましたorz なんつーか……日本でも有るよなーこういう事件……ミステリではあまり無いパターンだけど胸糞悪い……ひたすらこんな事件が起きてしまったのが哀しい。
このマシュー・ヴェン警部ものは早川書房でのシリーズものになるようです。第2作はこの余波がどうなるか、家族に対する変化も楽しみです。
「哀惜」でした(・∀・)/
予測不可能な男、奇妙なゲーム……超能力アクション全開!?(*^o^*)/