今も昔も、口の端に笑みを浮かべよ。
◇文豪たちが書いた笑う名作短編集◇
彩図社文芸部 編
本書には、11人の名だたる文豪たちによる「笑える話」が13作品収録されています。
誰もが知る昔話を皮肉たっぷりに描いた芥川龍之介の「桃太郎」、素直になれない男の〝ツンデレ小説〟である太宰治の「畜犬談」、都会の恐ろしさをユーモラスに綴った夢野久作の「恐ろしい東京」、独特な語り口が癖になる、シュールでナンセンスな坂口安吾の「風博士」などなど……。
馬鹿馬鹿しくて笑えるものから皮肉が効いたブラックジョークまで、様々な笑いの形を意識して選定しました。
堅苦しい「文学」のイメージとは一味違う、おかしくも味わい深い名文たちをご堪能ください。
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1.算盤が恋を語る話
(江戸川乱歩)
2.殿さまの茶わん
(小川未明)
3.畜犬談ーー伊馬鵜平君に与える
(太宰治)
4.酒ぎらい
(太宰治)
5.恐ろしい東京
(夢野久作)
6.手品師
(豊島与志雄)
7.或良人の惨敗
(佐々木邦)
8.永日小品(抄)
(夏目漱石)
9.風博士
(坂口安吾)
10.流感記
(梅崎春生)
11.蝿
(横光利一)
12.桃太郎
(芥川龍之介)
13.芋粥
(芥川龍之介)
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「文豪たちが書いた笑う名作短編集」です(・∀・)
昨今は文豪ブームにわいていてこの類のアンソロジーがたくさん刊行されていて非常に良いことかと思います。漫画やゲームやアニメをきっかけにして何が悪い。中には研究者顔負けの知識を得たり、それでプロ顔負けの二次創作をする人もいるし、そうなった人間の勝ちよ。
本書の目当ては5。「文豪ストレイドッグス」7巻でクソガ……いやQ少年がナオミたちに急襲したその足で町をぶらつきます。そこで出会ったのはなんと…………っていうか自業自得過ぎて涙がかえって白々しい、むしろよく生きられたな、と思います。はっきり言ってここで……と思ったことはここだけの話です。ただでさえ子ども好きじゃないので尚更クソガキには同情したりなんざしません。
ここでQは町の恐ろしさを垣間見ますが、本書収録の「恐ろしい東京」も同じ。上京した手の青年が東京の複雑な小細工や東京に住む人の嘘や詐欺に騙されてしまうところを軽い筆致で書いています。夢野久作自身、九州の出身なので上京組。作品のような出来事は実体験なのでしょう。
本書のテーマは笑う。5のようにぷっ、と噴き出してしまうものから人間が滑稽で仕方ないもの、ブラックユーモアものまで13編。算盤でしか想いを語られる男の可哀想な顛末、夫婦喧嘩で夫が負けるまで、手品師が煙にしてしまった最後のもの、風邪をひいた作家に起こった意外な効果……落語もそうですが、笑いというのは本来他人の滑稽さを理解するという、シニカルでブラックなものなんですね。
って芥川版「桃太郎」ってこんな話だったのか……子供に読ませたくないお伽噺No.1になれる← 昨今では「桃太郎」は鬼目線で描かれて批判されたり、作品を通して日本国憲法を学べる児童書まで刊行されているというので従来のお伽噺はだんだん非現実的の目でしか見られなくなっていますね。
「文豪たちが書いた笑う名作短編集」でした(・∀・)/
「偶然」によって選ばれた、その結末は……(*^o^*)/