町民の意地、武家の矜持……どんなところにも心打つ悲哀と情が有る。
◇松風の門◇
山本周五郎
幼い頃、剣術の仕合で誤って幼君の右眼を失明させてしまった俊英な家臣がたどる、峻烈な生き様を見事に描いた“武道もの”の典型「松風の門」、しがない行商暮しではあるけれども、心底から愛する女房のために、富裕な実家への帰参を拒絶する男の心意気をしみじみと描く“下町もの”の傑作「釣忍」、ほかに「鼓くらべ」「ぼろと釵」「砦山の十七日」「醜聞」など全13編を収録する。
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1.松風の門
2.鼓くらべ
3.狐
4.評釈堪忍記
5.湯治
6.ぼろと釵
7.砦山の十七日
8.夜の蝶
9.釣忍
10.月夜の眺め
11.薊
12.醜聞
13.失恋第五番
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星組公演
昭和53年(1978年)9月15日〜10月1日
バウ・ロマン『いのちある限り』2幕
ーー山本周五郎「野分」「釣忍」より
脚本・演出 柴田侑宏
花畑で働くお紋(遥くらら)と恋に落ちた新次郎(鳳蘭)は、武士を捨て、お紋と幸せに暮らし始めるが、松嶋家の家督相続争いに巻き込まれる。お紋は身を引こうとするが、新次郎は腹違いの弟・竜之助に跡目を継がせるべくわざと勘当を受け、お紋の許に帰っていく。山本周五郎の短編「野分」「釣忍」を基に、昭和46年6月、宝塚大劇場で上演された作品を、バウホール向きに手を加え再演。
雪組公演
昭和53年(1978年)10月6日〜10月10日
バウ・ロマン『いのちある限り』2幕
ーー山本周五郎「野分」「釣忍」より
脚本・演出 柴田侑宏
花畑で働くお紋(四季乃花恵)と恋に落ちた新次郎(鳳城ひろき)は、武士を捨て、お紋と幸せに暮らし始めるが、松嶋家の家督相続争いに巻き込まれる。お紋は身を引こうとするが、新次郎は腹違いの弟・竜之助に跡目を継がせるべくわざと勘当を受け、お紋の許に帰っていく。星組から雪組若手へと続演。
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「松風の門」です(・∀・)
「さぶ」に続いて2作目の山本周五郎作品です。そしてまたもバウ公演。この作品は2作品を基にしたオリジナルで、本書に収録されている「釣忍」からは「商家の主人を異母兄に譲り、貧しいけれど恋女房のいる暮らしに帰っていく」を取っています。決別する為にわざと勘当される所業をしでかす、ってところが江戸時代っぽい。
本書は短篇集、武士や武家に生きる人たちに焦点をあてた武道もの、下町や市井の人たちを主人公にした下町ものの13作。歴史に埋もれてしまった名前は無いけれど紛れもなく生きていた誰かの意地や矜持が描かれています。本当の悪人や正義の味方が居ないからこそ失われ、2度と取り戻せない、かけがえの無いものの存在の大きさ重さ、脇道に逸れてしまった、違う生き方をしてしまった人たちの哀しさ苦しさが胸を打ちます。なんというか後味が物哀しいものが多いです。9や12ぐらいのハッピーエンドが欲しい……
13は異色作で、唯一の戦後もの。特攻隊で生き残ってしまった人たちが、強盗団に成り果ててしまった人たちを退治したり、改心させたりする話。勧善懲悪じゃないところが良い。21世紀の読者にも響きます。
歴史小説や時代小説は神様目線の語りがウザいものもあってあまり好きでは無かったのですが、山本周五郎は良いかも。「野分」以外にも読む機会が有ったら良いのですが。
「松風の門」でした(・∀・)/
幻想詩情に富んだ宝箱を開けてみよ、「瞬きよりも速く」!(*^o^*)/