人気匿名作家のアシスタント……それは大きな"転機"の幕開けだった!
◇匿名作家は二人もいらない◇ -Who Is Maud Dixon?-
アレキサンドラ・アンドリューズ 大谷瑠璃子 訳
作家になることを夢見るフローレンス・ダロウはある日、匿名のベストセラー作家、モード・ディクソンのアシスタントとして雇われる。最初はまじめに仕事をしていた彼女だったが、次第にモードの原稿へ自分の文章を入れ込み、共同執筆者じみたことに快感を覚えるようになる。そしてとある事故がきっかけとなり、作家になりたいというフローレンスの野心が爆発し……予想できないどんでん返しの連続に驚愕必至のサスペンス。
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出版社〈フォレスター・ブックス〉の編集アシスタントのフローレンスは実は作家志望。なによりも作家になりたくて堪らないのに現実は同僚に先を越され、既婚者の上司と関係を持ってストーキングの果てに職場を追われたりと散々。失業したフローレンスはある日、エージェント会社のグレタからモード・ディクソンのアシスタントにならないかと持ちかけられる。
モード・ディクソン! ドラマ化も決定したベストセラー作品『ミシシッピ・フォックストロット』の作者、けれど絶対に表に出ない、謎の多い匿名作家! これに乗らない手は無い。フローレンスは一も二もなく飛びつく。
モード・ディクソン、本名ヘレン・ウィルコックスはケイロという小さな町に住み、徹底的に独りになっていた。フローレンスはメールの編集や原稿起こしを行いながらやがてヘレンの原稿に自分の文章を入れ始める。まるで共同執筆者みたいだ……その快感はやがて取材旅行で行ったモロッコで暴走する。……ヘレンは自分の過失で死んだ。それなら私がヘレン・ウィルコックスに、つまりモード・ディクソンになれば良いのだ……しかしその目論見は思わぬところで綻びを見せる。いや最初から綻びはあったのだ……それもフローレンスが作ったものでは無く、ヘレンが作った……
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「匿名作家は二人もいらない」です(・∀・)
久しぶりの現代ミステリです。評判も高い上に主人公が作家になりたくて堪らない女性っていうところが刺さりました。自分もそうなのでね……前半のフローレンスの環境や心情はヤバいところもあるのに共感の方が勝って抉られました。同僚アマンダに先越されるところとかほんと辛い! フローレンスは作家になりたい私自身。
匿名作家、というか覆面作家のモード・ディクソンもといヘレンという人物が非人間的性格で「こんな田舎町に住んで徹底的に交流を断つなんて絶対隠していることあるだろうな……」と思っていたらそう来るかい。正直な話、予想出来ない、という予測に反して予想は出来てしまったのですが←、その明かし方が上手い。どんどん伏線が回収されていく瞬間にゾクゾクして一気読み出来ます。毎度毎度この味は癖になります。
二面性を持つ人物、私を私だと誰も知らない、それを証明出来ない危険性、「ふりだったものを本物にする」瞬間ーーー匿名作家の出現はこれが初めてではありませんがこの作品は現代だから書けた作品だな、と思ったり。原題も邦題もどちらも上手い。
「匿名作家は二人もいらない」でした(・∀・)/
次はあの! 文豪の! 傑作に挑む!(*^o^*)/