クリス・ウィタカー◇われら闇より天を見る◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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かつて子どもを殺してしまった少年が帰って来たーーー大人になって、でも……人の形をした運命に翻弄されるダッチェスの行方は?

 

 

 

 

◇われら闇より天を見る◇ -We Begin at the End-

クリス・ウィタカー 鈴木恵 訳

 

 

アメリカ、カリフォルニア州。海沿いの町ケープ・ヘイヴン。30年前にひとりの少女が命を落とした事件は、いまなお町に暗い影を落としている。自称無法者の少女ダッチェスは、30年前の事件から立ち直れずにいる母親と、まだ幼い弟とともに世の理不尽に抗いながら懸命に日々を送っていた。町の警察署長ウォークは、かつての事件で親友のヴィンセントが逮捕されるに至った証言をいまだに悔いており、過去に囚われたまま生きていた。彼らの町に刑期を終えたヴィンセントが帰ってくる。彼の帰還はかりそめの平穏を乱し、ダッチェスとウォークを巻き込んでいく。そして、新たな悲劇が……。苛烈な運命に翻弄されながらも、 彼女たちがたどり着いたあまりにも哀しい真相とは――? 人生の闇の中に差す一条の光を描いた英国推理作家協会賞最優秀長篇賞受賞作。

 

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中学生のダッチェスはケープ・ヘイヴンに住む自称『無法者』。アルコールと薬物依存症の母スターに代わって弟ロビンの面倒を見、決して人に頼らない、勇ましく孤高だ。スターは30年前に妹シシーがボーイフレンドのヴィンセントが運転していた車に轢き殺されて以来、立ち直っていない。

 

立ち直っていないのは警察署長のウォークも同じだ。ダッチェスたちを気にかけながらもヴィンセントとの友情を大事にし過ぎている。ヴィンセントだけではない。町の住人全員にシシーの死とその犯人ヴィンセントの記憶が刻み込まれている。

 

2005年の現在。その男、ヴィンセント・キングが帰って来た。ケープ・ヘイヴンに、別荘の再開発が進み、ピリピリしている最中に。不動産屋のディッキー・ダークはかなり執拗だ。スターがダークに殴られたと知ったダッチェスはダーク所有のクラブに火をつける。その直後、スターは……

 

スター殺害現場にいたのはロビンと血まみれのヴィンセント。まさかヴィンセントが……ウォークは無実を信じながらも弁護士で昔の恋人マーサと厳しい戦いに臨む。一方姉弟はスターの父親ハルに引き取られる。ダッチェスは最初ハルに嫌悪と不信感を募らせるが話をするうちに心が変わっていくが、またしても……

 

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「われら闇より天を見る」です(・∀・)

 

今年度「コノミス!」海外編第1位、非常に評価高いです。本書は父から借りたのですが、本人よりも先に読むことになりました←

 

過去の事件は長い影を落とす。これはもはや自然の摂理です。例え犯人はとっ捕まっていようが死刑に処されていてもその当時を思い出させる人がいると、どんなに時間が経っても、30年経っても、人が去って新しい人がやって来てもその事件は本当の意味で終わることが出来ない。本書はそれを嫌というほど思い知らされて読んでいてかなりキリキリしました……胃が←

 

「ザリガニの鳴くところ」と同じく1人の女性が過酷で理不尽な運命に翻弄されながらも立ち向かっています。性格全然違うしダッチェスは独りではないけれど。荒々しく、孤高にならなければならない理由が痛ましくて後半はひたすら応援していました。最後の別れの場面には涙しか無い……

 

実はスター殺害の犯人についてはかなり早い段階から検討がついてしまいました。だって有罪濃厚のヴィンセントが「無実だ」と言いながらもそれ以上は黙して語らない理由は、たった1つしか思い当たらないから。人は案外自分の為だけにはこうはなれない。

というか犯人とか云々よりもダッチェスや容疑者の一挙一動、心の機微の方に目がいく時点でもう自分の楽しみ方が変わってしまったんだな……と思ったり。

 

本書に出て来る人たちは皆、根っからの悪人では決してないのに皆、なんらかの過ちないし罪を犯してしまっている。それがひとえに誰かの、何かの為故に連鎖があまりにも残酷です。ウォーク、辛い……

「罪は永遠に償われない」と自分は常々思っています。赦される日は来ないし、罪の意識からいつかは解放されると思ってはいけない。だからといって区切りをつけたり先に進んではいけないというわけではない。その方法は人によって違うが自分で責任持って決めた事ならそれはきっと正しいに違いない。

 

「われら闇より天を見る」でした(・∀・)/

次は映画を撮りにアイルランドへ(*^o^*)/