凄惨な殺人現場は小児性愛者の処刑場! 撲滅と法改正に揺れるデンマーク相手に警察はどう出るーーー!?
◇死せる獣ー殺人捜査課シモンスンー◇ -Svinehunde-
ロデ&セーアン・ハマ 松永りえ 訳
コペンハーゲン警察殺人捜査課課長コンラズ・シモンスンは、突然休暇から呼び戻された。学校の体育館で、謎の配置と仕掛けで首を吊られた男性五人の遺体が見つかったからだ。早期解決の重圧が刑事たちにのしかかる。だが、被害者の身元特定が進まぬうち、殺された男たちは小児性愛の常習犯で、当然の報いを受けたのだ、という噂が広まり、犯人擁護の世論が巻き起こる。妨害もあり、捜査はさらに難航。そこでコンラズは、世論を逆手にとって、犯人をおびきよせる罠を仕掛けようとするが…。全世界注目の大型警察小説登場。
☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆
愛娘アナ・ミーアとの休暇は突然のお呼び出しでおじゃんになった。小学校の体育館で5人の男の首吊り死体が見つかったからだ。現場は凄惨を極め、死体は誰だか分からないほど傷つけられてる。その上殺害には特殊な装置が使われ、何故か幾何学模様を描いている。殺人者は異常者か?
コンラズは校務員のピア・クラウスンを重要容疑者と見て捜査を開始するが彼は直後死体になって見つかる……
「彼ら」は幼い頃の記憶に苦しみながら各々の場所で各々の役割を果たした。その中で1人の男がチェーンソーを手に行動を起こす。彼らの行動はやがて警察よりも先に5人の首吊り死体の素性と悍ましい性癖を明かし、世情を大きく揺るがす。被害者よりも罰を下した殺人者の方を庇う流れになったのだ。それでもコンラズの行動は変わらない。娘のアナが危険に晒される可能性に怒り爆発、犯人逮捕のため、一流のタブロイド紙記者をも欺く大胆不敵な方法で真犯人もとい実行犯を誘き出す!
☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆
「死せる獣ー殺人捜査課シモンスンー」です(・∀・)
本書から(比較的)現代デンマーク・ミステリです。現代北欧が垣間見えるというのは有意義だし、何より書店で買える、というのは良い!
北欧ミステリの醍醐味は重ったいテーマに個性的、いや癖が強い登場人物です。本書のテーマはズバリ小児性愛。実に重たい。デンマークの小児性愛事件の多さとえげつなさにドン引き出来ます← 日本も他人事では無い。今回は殺人実行犯が過去の被害者であり、殺害された人間がずっと犯罪者だった、という点で犯人擁護と法の厳罰化でデンマーク全体を揺るがせます。
「殺された人間がもし重罪人だったとしたら、その殺した人間を断罪出来るか?」は推理小説で時々登場する難しいテーマの1つです。これに正解は無いけれどコンラズらを見て思うのは「人を殺す」という事実そのものを、彼らは断罪したいのだ。
読んで思ったのが高校で政治家を動揺させるほどの活発な議論が行われたこと。そうなるってすごいことですよね。日本じゃ「政治活動するな」の一言で切り捨てられるのに……いや、馬鹿なの?💢
さて、主人公は殺人捜査課課長のコンラズ・シモンスン警部補。知性派とは言うけれど非常に短気な知性派です。一匹狼とは言わなくても独走癖有り。娘との仲は良好ですが長年ほったらかしにした過去があるのでこれまた家庭破滅型のタイプのようです。本当に北欧ってどうして……そんな彼の周りには「女伯爵」と呼ばれる理性的な女性警官や橋渡しの上手な手練れや怖いもの知らずの新人等々個性的な部下がいます。2作目以降も楽しみにしたいですが、まだ翻訳されていないので気長に待ちたいと思います。
「死せる獣」でした(・∀・)/
ブラッドベリのこの空気感は癖になります(*^o^*)/