史上初!? 大統領が誘拐された!?
◇消えた大統領◇
レックス・スタウト 久米穣 訳
世界一の大国アメリカの大統領は、目のまわるほどいそがしく、5分間の自由さえ許されない場合もあります。ところが、この物語では、その大統領が、世界の歴史を変える重大発表を行う直前に、神隠しにあったように、ホワイトハウスから消えてしまったのです。
当局の必死の捜査、さらに全米一億七千万の国民の努力にもかかわらず、その手がかりさえ掴めません。悲観的な人たちは、大統領は外国に誘拐されたか、殺されたに違いないと言い出しました。
しかし、ここに名探偵が登場します。
大統領令嬢のジュリーと秘書のアルマーです。2人はFBIの遊撃隊員のチック=モファットの助けをかりてドキュメンタリー風に当日の大統領の行動を再現しながら、その行方を追っていきます。怪団体グレーシャツ、六本の植木、大統領夫人のなぞの行動など、2人の目の前に、事件解決への糸口が次々と現れます。
読者の皆さんも、ジュリーたちの助手になったつもりで、この世紀の怪事件の真相を突きとめてみませんか!
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アメリカ合衆国大統領スタンリーはいつも多忙だがこのところは佳境に入っている。スタンリーは3月23日の火曜日に重大発表を行うと予告していたが、それを良しと思わないグレーシャツ党からもう139通も脅迫状が届いたのだ。
今、合衆国は緊張を強いられた。世界大戦後、「北国のクマ」P・P・C国はあらゆる分野で力を伸ばし、国内の月影島にいきなり要塞を築きあげたのだ。スタンリーは向こうの首相フルーリンと会談を望み、断られてしまったことが国民の不満になっているのだ。きっとこの脅迫状は本気だ……
アルマーは恋人のチックに相談した帰りに何者かに襲われる。
そして運命の日……なんと重大発表は延期された。それもそのはず……大統領が行方不明になってしまったのだ! 犯人はグレーシャツか、それともホワイトハウス内の人間か? アルマーは大統領令嬢のジュリーと一緒に捜査を開始するが……どうやら黒幕はまさかのホワイトハウス内にいる!?
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「消えた大統領」です(・∀・)
なんとレックス・スタウトのジュヴナイル・ミステリです。かなり初期に書かれた作品なので早く読みたかったのですがなかなか読む機会を得られず、先日やっと読むことが出来ました。
そうなんですよ、この作品が書かれたの1934年なんですよ。「毒蛇」の次の年です。
「…………えっ、これ冷戦時代に書かれたんじゃないの!?」
「北国のクマ」ことP・P・C国はあの国でしょ!? 名前がそうっぽいし! 第二次世界大戦も始まってない、冷戦の影など無い時代にこの緊迫感を描いたスタウト、マジ予言者。事実この作品な長い間匿名扱いされていました。的確に約15年後の世界情勢を予言してしまったものすごく危険なジュヴナイルだったんです。何しろ「カーテン」という言葉も出てくるのですから。これが予言者じゃなくて何さ。
肝心の中身は何者かに誘拐されてしまったと思しき大統領失踪事件の謎を秘書のアルマーと令嬢ジュリーが二人三脚で真相に近づく、というもの。怪しい団体に演説当日に依頼された植木の搬入に怪しい行動を取るファースト・レディーと副大統領。どいつもこいつも怪しく見えます。またジュヴナイルらしくアクションもあり、無能な役割を振られる可哀想な御仁もいますが最後に大人の一味を出してくれます。大人ってきっとこういうことだ!
「消えた大統領」でした(・∀・)/
次は子どもから大人になってしまう……少し切ないファンタジーです(*^o^*)/