依頼人はあのネロ・ウルフの"娘"!?
◇我が屍を乗り越えよ◇ -Over My Dead Body-
レックス・スタウト 佐倉潤吾 訳
ネロ・ウルフのもとを訪れたひとりの女性が、ネヤという同性の友人にダイヤモンド窃盗の嫌疑がかかっており助けて欲しいと嘆願する。二人はモンテネグロからの移民で、教習所でフェンシングの教師をしているという。モンテネグロと聞いただけでなぜかウルフは尻込みしたが、再度訪れた女性はネヤがウルフの養女であると明かし、その証拠を持参する。重い腰をあげてウルフはアーチーを教習所にやるが、生徒のひとりがフェンシングの剣で刺殺される新たな事件が起こる。やがて次第に判明してくる国際的陰謀……ウルフが自らの前半生を語る異色作。
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ネロ・ウルフは銀行に預けている預金が潤沢で事件がお気に召さないと依頼を断ることが有る。今回がそれだった。アーチーはこの度8回もの依頼を断る旨を伝えている。
9件目の依頼もきっと断る運命だった。アーチーをおや、と思わせたのはその依頼人の不思議なアクセントだった。どうやらモンテネグロからの移民らしい。ネロ・ウルフの故郷じゃないか。あまりよく知らないけど。もしかしたら違う反応を見せるかも知れないと思ったアーチーはその依頼人カルラを通す。すると違う反応どころじゃない、拒絶反応を見せたではないか!
カルラ・ロヴチェンとは何者なのか? その答えはカルラ再訪の時に明らかになった。カルラは友人ネヤ・トルミッチを助けて欲しいと懇願したのだ。何故なら彼女は貴方の養女だから、と……
3歳の時に見たっきりの大人の娘に動揺するネロ・ウルフだが養子証明書を預かり、依頼を受ける。とりあえずアーチーを2人が勤めるフェンシング教室に派遣する。幸いネヤがかけられた宝石盗難事件がすぐ解決したが……今度は生徒の1人が殺された! その裏には欧米とバルカン諸島間での陰謀があった……
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「我が屍を乗り越えよ」です(・∀・)
「ネロ・ウルフ、子ども居たんだ!!?」と驚くことから始まりました笑 娘とは……ネロ・ウルフの人間的性格は食べることしか考えられないのでびっくりですよ。よくよく読めば娘は娘でも……そうだよな、ネロ・ウルフが女性と云々こんぬとか考えられない← 彼はあまり自分の人生を語りませんが、今回初めて送金相手の1人が明らかになりました。事件解決後、2人はどうなるのか……"娘"は芯からヨーロッパの、モンテネグロの人間です。アメリカには住めないかな……
本書の刊行は1940年なので欧米諸国はドイツ・イタリア等の枢軸国と英国・フランス等の反枢軸国に分かれ、バルカン諸国はどちらかにつくように迫られた時代でした。その世相を活かし、珍しいことに国際陰謀ミステリーです。ユーゴスラビア、モンテネグロ、クロアチアの歴史の勉強になります。下手したらこの時代、どこもかしこもスパイの諜報戦会場になっていたのかも知れない。舞台は普通のフェンシング教室のはずなのに教習長哀れなり←
この話には続編があり、「黒い山」ではネロ・ウルフがなんと里帰りをします。あの外出嫌いが!!← という事はまた国際色濃いスパイミステリーになるのかな。というか言葉の分からないアーチーはどうするんだろうか←
「我が屍を乗り越えよ」でした(・∀・)/
次は諸事情により、デンマーク・ミステリと「文豪ストレイドッグス制覇計画」を続けてお送りします(*^o^*)/