いつか別れる、けれどそこには確かに愛が在った。
◇おめでとう◇
川上弘美
いつも束の間の逢瀬しかできない2人。年末の一日、初めて過ごした2人だけの長い時間。鍋を準備して、「おかえり」「ただいま」と言い合って(「冬一日」)。ショウコさんと旅に出る。電話の最中に「なんかやんなっちゃった」と声が揃ってしまったのだ(「春の虫」)。いつか別れる私たちのこの一瞬をいとおしむ短篇集。
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1.いまだ目覚めず
2.どうにもこうにも
3.春の虫
4.夜の子供
5.天上大風
6.冬一日
7.ぽたん
8.川
9.冷たいのが好き
10.ばか
11.運命の恋人
12.おめでとう
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「おめでとう」です(・∀・)
久しぶりに会う、別れた男に復讐を誓う、旅に出る女友達。ある冬に鍋を囲むという密かな逢瀬を重ねる、別れて再び会ってまた別れる、離れられない男女……12組の確かな一瞬を切り取った短篇集です。
大きな出来事は無く、淡々と紡がれるので人によってはとんでも無く単調で飽きるのですがこの人の場合、え、そう考えるか。と思うと同時にどこか心にしっくりくる感じがあるんですよね。名前の無い感情をぱっと照らしてくれるというか。3の男に騙されたショウコさんがその男について話す内容が特に。愛の本質、他者と他者が言葉を紡ぐ時に世界が微かに変わっていく様が目に見えるというか……でもこの人の作品、明るいのに決まって別れが見えるので切ないんだよな……泣き笑いするってきっとこんな感じ。
ブログを始めた頃ならおそらく辟易しただろうけど今は起承転結の小さい淡々さになんとなく心が救われます。今が擦れているからかな……←
「おめでとう」でした(・∀・)/
次は『真鶴』を巡る女性たちの物語です (*^o^*)/