オイズル・アーヴァ・オウラヴスドッティル◇花の子ども◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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花を育てながら子どもを育て、新しい関係を築くーーー新しい家族とパートナーの形。

 

 

 

 

 

◇花の子ども◇ -Affleggjarinn-

オイズル・アーヴァ・オウラヴスドッティル 神崎朗子 訳

 

 

母が遺したバラをもって僕は旅に出る。遠くの修道院にある庭園に植えるのだ。ところが、温室育ちの僕の旅は、ままならない。飛行機内で腹痛にもだえ、森でさ迷う。旅で会った女性たちとの関係を妄想しては、空回り。当の庭園は荒れ果てており、手入れを始めたところ、意外な人物が訪れる。かつて僕と一夜をともにした女性が、赤ん坊を預けにきたのだ。こんな僕が父親に!? ゆったりした時が流れる小さな村で、右往左往しながら成長する青年と家族をあたたかく描く長篇小説。

 

 

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アルンリョウトゥル、愛称ロッビ、22歳。父親と2人暮らし、双子の弟ヨセフは自閉症で暮らしている、いずれも関係は良好。いつも考えていることは死と身体(=セックス)と薔薇。結婚はしてないけど7ヶ月の女の子どもが居るーーー

 

 

僕は母の遺した新種の薔薇「8弁の薔薇」を遠くの国の修道院に植えるべく旅に出る。ーーーが初っ端から盲腸に罹って入院し、言葉は全然分からないまま森で迷って泊まった宿で女の子を車に乗せて340キロ、演劇学校に送る為に走らせる。なかなか修道院には着かない。

 

 

やっと着いた修道院の花園は荒れていて僕は夢中で整備する。言葉は相変わらず分からないけど修道院のトマス神父とは映画を鑑賞したり、時間はゆっくり流れて心地よい。

 

 

そんな中、1度だけ関係を持った女性アンナが赤ん坊を預けに来た。写真だけの女の子フロウラ・ソウルが一気に身近になった。やがてアンナも僕のアパートに住み始めて不思議な同居生活が始まった。フロウラ・ソウルと関わるうちにアンナに対する気持ちにも変化が現れ……

 

 

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「花の子ども」です(・∀・)

 

 

アイスランド文学! と言うところに惹かれて読んだ作品です。ミステリー以外でアイスランド文学を読むのは実は2回目だったりする。

 

 

結婚していないけど子どもがいる、というのは古い価値観に縛られないアイスランドなら普通の話です。ですが全く親になる自覚なしで子どもを持つのはてんで別の話でして、子育てとパートナーとの新しい関係の行方を優しく描いています。そもそもこの話、現代的要素が全然ない。飛行機ぐらいでインターネットも出てこないし、ロッビがどこの国の修道院に行ったのかも分からない。イカの調理方法とかあるので多分南欧かその辺りだとは思う……どこか牧歌的で御伽噺のように優しく、時間はゆっくり流れている。

 

 

主人公ロッビは責任感のせの文字もないような今時の若者ですがフロウラ・ソウルを育てるうちに本当にアンナを好きになっていきます。でもアンナは……昔なら、そして今の日本なら考えられない新しい関係ですよね。そもそも学生身分で子どもを産み育てる、1人親で育てるという選択肢が日本にはあまりない。そんなこと出来ないとは思いつつも……もしそう出来たらどんなに良いとも思う。勿論無責任のむの文字は出るだろうし、好奇や偏見の目はあるだろう、でも「排除」では無く、「受け入れる」ことから始めたらロッビのように心に何か新しいものが生まれるかもしれない。

 

 

アンナとロッビは長く離れたままかも知れない。もしかしたらずっと離れたままかも知れない。けれど心はずっと「フロウラ・ソウルの母と父」で物理的な距離がなんだ、と思わせてくれる。こう考えてみるとこれからの時代は「夫妻」ではなく「パートナー」と言う言葉が相応しいとも思える。私も「パートナーだ」と言えて、それを許してくれる人と一緒になりたい。

 

 

北欧文学=ミステリーと思っている人は多分多い気がするので(それしか翻訳がないから)、もっと翻訳作品が増えてほしいと思いました。やっぱり世界文学を読まないって言うのは損だ。もっと読もう。せっかくTwitterで本の情報が入るようになったんだから。

 

 

「花の子ども」でした(・∀・)/ 

次もまた新しい作家です。今度は日本人だけど!(*^o^*)/