凍死した女性と館の女性たちが抱えた傷と過去とは?
◇雪の女◇ -Luminainen-
レーナ・レヘトライネン 古市真由美 訳
エスポー警察の巡査部長マリア・カッリオは、女性限定のセラピーセンター、ロースベリ館での講演を依頼された。だがその講演から数週間後、館の主であるセラピストが行方不明になり、雪深い森でガウンとパジャマのまま死体で発見される。当時館に滞在していたのは、訳ありげな女性ばかり。北欧フィンランドを舞台に、小柄な女性警官マリアが事件を追う。“推理の糸口賞”受賞作。
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小柄なマリア・カッリオ巡査部長はクリスマスに男子禁制の『ローズベリ館』に"精神的護身術"の講師として招かれた。ローズベリ館にはあらゆる事件や暴力に傷ついた女性たちがいて、マリアは同情したり、憤慨したりしつつ知り合いになる。
数週間後、講師の依頼をした館の主人エレナが行方不明になったと通報があった。事件性があるか分からなかったが、エレナは凍死死体で見つかる。……しかし雪深い森の中をパジャマとガウンだけで歩いたりなどしない。エレナは誰かに殺されたのでは無いか?
エレナはガードが硬く、プライベートがほとんど分からない上に館に滞在していた女性たちも皆、触れられたく無い傷の持ち主で捜査はなかなか進まない。そんな中、マリアに恨みを持つ囚人が脱獄した挙句、同僚警官を人質に立て篭もる事件が起こり……
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「雪の女」です(・∀・)
久しぶりの北欧ミステリー、新しい作者による、新しい主人公です! 本ブログのフィンランド・ミステリ初の女性主人公です!
名前はマリア・カッリオ。巡査部長。160cmとフィンランド人の中では小柄な方ですが(私とさほど変わらない)、強気で勇気があります。既婚者で中盤で妊娠が分かります。
本作はフィンランドでは人気シリーズで本作は4冊目。舞台となるエスポーにやっと落ち着いた頃のお話。マリア、意外に落ち着かないタチだった←
女性主人公で女性ばかりを容疑者にすることでフィンランドにおける男女問題の意識を浮き彫りにしています。舞台は2000年代なのでもう20年近くの年数が経っていますが女性に対する侮蔑意識が凄い……古レスタディアス派とか宗教は分からないし、信仰は自由だけど「いやいや、それを建前に支配したいだけだろうが」感が始終消えなかった……ミッラもヨハンナもニーナも皆、「女性だから」という理由だけで被害者になってしまった。それに腹が立たなかったら馬鹿も良いところだ。あとアストロセラピスト、カリの最後の場面が本当だったら恐ろし過ぎる。本当に裁かれるべきなのは、彼女では無くこいつだ。
本書を読んでいて「……こういう問題の関係者の描写は女性で無いとここまで書けないだろうな」と思いました。これが男性作家だったら、最後解決場面で見せた関係者の秘めた強さと真実を掴んでいる力強さを書いて、かつ読者の胸を強く打つことが出来ただろうか?
昨日は国際女性デーでしたが、日本は勿論世界でも女性の地位向上はまだまだ途中です。勿論男と女は違うし、その違いは認識すべきですがそれを支配の為に誤認してはいけません。そして女性の立場が良くなっても中身が無ければすぐに形骸化します。「認める」「理解する」に終わりなど無いのだから。
「雪の女」でした(・∀・)/
次は超!お久のレオポルド警部〜!(*^o^*)/←