録音機を首から下げた青年を殺したのは?
◇メグレと録音マニア◇ -Maigret et Le Tueur-
ジョルジュ・シムノン 佐宗鈴夫 訳
大雨の降る夕方、若い男が路上で刺された。たまたま近くに居合わせたメグレはすぐ駆けつけたが、若者はすでに意識を失っていた。被害者は香水会社の社長の息子で、ソルボンヌの学生。人の恨みを買うような男ではない。ただ、録音マニアで、場末のバーやレストランに出かけては、人の会話を盗みどりしている。事件の目撃者によると、犯人はレインコートを着た若い男で、うしろからつけてきて刺している。殺しの動機は録音テープにあるという線で捜査は進められ、早い解決を予想されたが……犯人は意外なところに潜んでいた……
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大雨が続く3月。友人のパルドン医師夫妻との夕食会の最中に医師の近所に住むイタリア人が駆け込んで来る。なんと人が死にかけていると言うのだ。メグレとパルドンが急いで向かうと確かに若い男が血まみれで倒れている。意識はなく、まもなく亡くなってしまう……
身元は簡単に割れ、ミレーヌ化粧品会社の社長息子のアントワーヌだった。内気で友達も仲間もいない彼であったが、人の会話を録音すると言う変わった趣味があった。もしかしてその録音テープと関係が? 果たして聞いてみると強盗を示唆させる会話が録音されており、その一味を一網打尽にするが、その記事に「否(ノン)!」と書かれた切り抜きが届き……
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「メグレと録音マニア」です(・∀・)
シムノン作品1、2を争う変わり者が被害者です。人を撮るならともかく、声に惹かれるとは……しかも声に惹かれる理由はよく分からない……これはシムノン特有の当人以外には、いや本人ですら分からない」が滲み出ています。
事件を通報されて現場に急行するのが警察の常ですが、史上最短←で現場に向かえたメグレ。なんかもう物語の開始がエンターテイメント化してます。……これなら昨今の北欧ミステリーの方がよっぽど現実的ですわ。被害者も変人ですし。本人は「ヒューマン・ドキュメント」気取りをしてましたが、これは要するに……偏執狂ってやつか!? そう考えると犯人像にも納得出来ます。犯人は初めてのタイプです。本書の発表は1969年です。冷戦真っ只中、テレビ登場、被害者さヒッピーで当時の平和では有るかも知れない、しかし何処かしこに不安定さが有る……最初読み終えた時は「いやいや録音テープがあるんだからもっと違う犯人でも良いだろうよ!」と思ったのですが、当時の世相を反映させるなら確かにこの犯人像はありかも知れないと思えました。こういうタイプは偽者も含め、現代ではもう普通になっていますよね。流石はシムノン。人間をとことん描いていますね。
「メグレと録音マニア」でした(・∀・)/
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