スタニスワフ・レム No.9◇浴槽で発見された日記◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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歴史の空白を解く鍵は、廃墟で見つかった日記にある!?

 
 

 
◇浴槽で発見された日記◇ -P Amiętnik Znaleziony W Wannie-
スタニスワフ・レム 深見弾 訳
 
 
第三ペンタゴンの廃墟から発見された一冊の日記……。歴史の謎を解く鍵になるかと思われたその日記には超管理社会の恐るべき実態と、それに伴って顕在化した極度の人間不信が赤裸々に暴露されていた。数千年の未来に視座を据え、病める現代文明を痛烈に射抜いたレム会心のSF長篇!
 
 
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宇宙探査船が持って帰ってしまったハルチウス剤によって〈パピル〉ーーー紙が崩壊し、記録が悉く消滅してしまった未来。それは歴史の消滅を意味した為、世界は大混乱に陥った。そんな中第三ペンタゴンの廃墟から見つかった日記はそんな過去を解明する手がかりになったと思われた……
 
 
《建造物》。わたしは司令官カシェンブラデから極秘の《使命》を言い渡される。……ところがその《使命》について何の詳しい説明は無いし、様々な《階(レベル)》をたらい回しにされる上に出会った人間は悉く疑心暗鬼に陥っているらしい……自殺者まで出る始末。わたしはこのたらい回しと交わされる言葉と数字が暗号であること、《階》ごとに繰り広げられる諜報戦に気が付きながら、わたしはこの顛末一切がある種の試験では無いか、担がれたのでは無いかと疑う……
 
 
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「浴槽で発見された日記」です(・∀・)
 
 
レム風不条理小説。ちょうどカフカの「城」がこんな風だと思われているのですが、未読なので分からず、代わりにわたしはカズオ・イシグロの「充されざる者」を思い出しました。この小説と同じように「わたし」も振り回され、たらい回しにされ、疑心暗鬼に陥ります。そしてもう1つ。バベルの塔のような《建造物》。無限に行動しているように見えて閉じ込められている様は「おおきな森」を彷彿させました。交わされる言葉1つ1つが暗号化され、何気ない全てを疑わなければならないというのは……とてつもなくストレスだし、とてつもなく疑心暗鬼。疑心暗鬼で無ければ生きていけない。それは果たして、人間と言えるのか?
 
 
……さて。この顛末って超未来の過去の話なんですよね。紙が宇宙の物質で崩壊してしまう前の話。今大流行りのコロナみたいな物質が紙、というか記録媒体を悉く崩壊してしまった未来の過去の話。過去の記録が分からないのでその教訓を活かすことが出来ない。そんな中で見つかった日記は過去を知る手がかりになると思われた……が前章です。
……この前章、いるのか!!? 
え、待って待って。最初から終わりまでその未来社会のことには何も触れていないし、無くてもこの物語成り立つじゃん!!?と絶句しましたよ。ぶっちゃけ、前章が故意に切り取られたとしても(ダメ、絶対)何の違和感無く読めますわ!!
 
 
うーん……わざわざSF小説にしたかったのか? でも最初は「魔の山」のような純文学だったじゃないか。無理やりSFにしなかった方がレム風不条理小説として新開拓が出来たと思うのに……
 
 
「浴槽で発見された日記」でした(・∀・)/
次は〜……ゲームもしないし、アニメも観ないけど興味がないと言ったら大嘘になるからノベライズだけでも読むことにします(早口) (*^o^*)/