スタニスワフ・レム No.7◇ソラリス◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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ソラリスの海が送り込んだ「客人」と海の真意とは? 人類はその理解を超える知性体と邂逅した時、どうあるべきなのか?

 
 

 
◇ソラリス◇ -Solaris-
スタニスワフ・レム 沼野充義 訳
 
 
惑星ソラリスを探査中のステーションで異変が発生した。謎の解明のために送りこまれた心理学者ケルヴィンの目の前に自殺した恋人ハリーが姿を現し、彼はやがて悪夢のような現実と甘やかな追憶に翻弄されていく。人間とはまるで異質な知性体であるソラリス。そこには何らかの目的が存在するのだろうか。コンタクト―地球外の知性体との遭遇について描かれた、最も哲学的かつ科学的な小説。広大無辺な宇宙空間において、理解不能な事象と愛の記憶に直面し、人は何をすべきか。タルコフスキーとソダーバーグによって映画化された新世紀の古典、ポーランド語原典からの新訳。
 
 
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惑星ソラリスは赤い太陽と青い太陽を持つ、知性を持つ(としか言いようのない)海に覆われた謎の多い惑星。そのソラリスの調査は空中に浮かぶステーションで行われる。
 
 
ところが、そのステーションで異常が発生した。その解明の為に心理学者ケルヴィンが派遣されるが、ステーションの研究者であるスナウトは支離滅裂なことを言うばかりで何が起こったかを話してくれない。更にケルヴィンを呼び寄せたギバリャンは自殺を図り、もう1人のサルトリウスは部屋に篭ったままだ。
 
 
苛々するケルヴィンだったが、やがて彼の前に死んだはずの恋人ハリーが生前の姿のままで現れる。スナウトらの前にも「絶対に存在があり得ない」人間が現れたから発狂したのか? 睡眠を必要としない、死に至る怪我も癒えてしまうこの「ハリー」はソラリスの海が人間の為に寄越した「客」なのか? ソラリスは我々人間をどう思い、何を行いたいのだろう? ケルヴィンは「ハリー」をあの時のハリーとは違う人と感じ、愛し始めるがーーー
 
 
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「ソラリス」です(・∀・)
 
 
SF小説界の不朽の名作、遂に登場。此処でもレム氏が一生を懸けて挑んだ「人類の理解を超える"我々とは異なる"存在との邂逅」をテーマに、人間の普遍的なテーマである「愛」を織り込めて書いています。途中教科書か学術書かよ!?と叫びたくなる箇所も有りますが、ようはそう言うことです←
 
 
此処で興味深いのは今までの6作と大きく違い、人間ドラマも描かれていることです。ケルヴィンは些細な喧嘩が原因で亡くした恋人に会います。生前と同じ姿、しかし彼女は自分が異質に見られていることに気がついているし、睡眠は要らないし、傷も簡単に癒える。この「ハリー」は生前のハリーとは別の人間、別の人格なのか? という愛のテーマがあります。平野啓一郎の「分人」が1番答えに近いような気がしますが……ですが、この「ハリー」はソラリスの海が作り上げた客である以上、彼女の「本能」的なものはソラリスが握っているわけで……最後、「ハリー」は自ら道を選びますが、それはソラリスにとっても予想外だったと思うのでこの時「ハリー」は初めて自身であり得た?
 
 
結局ここでもソラリスの正体は明かされず、ケルヴィンの行方も不明です。しかしケルヴィンは生きているわけですから「理解」の道が残されています。幾星霜もかかるかもしれないし、永遠に理解出来ないかも知れない。しかし「人間」として生き続ければいつかきっと道は拓けるかもしれないと僅かで小さな希望を残しています。
 
 
「ソラリス」でした(・∀・)/  
次は「文豪ストレイドッグス制覇計画」、道が分かれた師匠と弟子が反対の立場で再会します(*^o^*)/