犬、猫、鳥、馬……豹まで! 動物は犯罪ですら人間の良き相棒!?
◇動物たちは共犯者◇ -Beastly Tales-
サラ・パレツキー 編 田中一江・他 訳
動物が重要な役割を果たす物語は三千年前も今も同じくらい好まれている。したがって、ミステリ作家たちが動物たちにある種の愛着を感じ、彼らが登場する物語をたくさん書いたとしても不思議はない。犬、猫、鳥、ハムスター、蛇……自らも大の犬好きで知られる女性作家パレッキーが、さまざまな語り口の多様な動物観と多岐にわたる短篇形式の精華を、膨大な作品群の中から選び抜いた、動物好きには読み逃せないアンソロジー!
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1.春のあらし(ドロシイ・S・ディヴィス)
(Spring Fever)
……セーラ・シェパードは不在がちなセールスマンの夫と2人暮らし。セーラはふとしたきっかけから寡暮らしで荷馬車を操るミスタ・ジョイスと親しくなるが……
2.心霊探偵社(ジョイス・ハリントン)
(Dwindle, Peak and Pine)
……マックス・ドゥインドルは年寄りだが魔法使い。仲間のロレッタは魔女でピーターは千里眼の霊能者。心霊探偵社を営む3人のところに死んだ夫からの電話に怯えるロシア貴族の女がやってきて……
3.ヒゲ長の奇妙な猫(リリアン・J・ブラウン)
(A Cat Too Small for His Whiskers)
……ホップルウッド農場には夫妻と3人の子どもたちが住んでいる。末っ子のドナルドの目下の関心は厩舎で猫たちと遊んでお話を聞かせること。ある日ドナルドは伸縮自在のヒゲを持つ不思議な猫を見かけたと言う……
4.白い死神(ジャスティン・スコット)
(The White Death)
……コネチカットのある牧場でコヨーテが羊を襲うようになった。人間たちは悩んだ末にフランスから特別な番犬を取り寄せた。猫は便宜上〈白い死神〉1号、2号、3号と名付けるが、今度は羊だけで無く、犬も殺されて……
5.モンバサへの客(ジェイムズ・ホールディング)
(A Visitor to Mombasa)
……ハーパー巡査部長は豹が現れたという通報を受ける。猟師心を刺激されたハーパーは豹の居場所を突き止めるまでに至る。そこに法律で禁止されている矢毒を調合している石を密告する電話が入る。
6.うまい話(ドナルド・E・ウェストレイク)
(A Good Story)
……金持ちのインディオの秘書をやるレオンの主な仕事は動物を売ること。加えて動物に呑み込ませた薬物を売ること。それを観光客らしい女に話した直後ーーー
7.正義は勝つ(ディック・ストッジル)
(Best Evidence)
……子の無い夫妻のわたしとマーサはひょんなきっかけでハムスターを飼うことになる。マーサはハムスターにチギーと名付けてとても可愛がるが、隣近所に越してきた悪ガキがチギーの安寧を乱して死なせてしまう。
8.トウモロコシ畑の侵入者(ジョーン・リクター)
(Intruder in the Maize)
……最近野生の豚にトウモロコシ畑を荒らされていることに悩むジャックは思い切った行動に出た。矢を用いるようになったのだ。ところがその矢は豚では無く、人を射ってしまった……しかもその矢には毒が塗ってあった!
9.最後のバッファロー(クラーク・ハワード)
(Plateau)
……タンクとディーリアの父子が管理しているバッファローのブルーノが死んでしまった。それはもうつまり相方のハンナが北米大陸最後のバッファローになったことを意味する。しかもハンナは高齢だ。狩など無理だ。それが強行されると知ったタンクはハンナを連れて……
10.迷い犬(アイザック・アシモフ)
(The Lost Dog)
……グリスウォルドは昔、ある犬を探し回ったことがある。病院に担ぎ込まれたホームレスの犬だ。ジェフと名乗ったきりのホームレスが探し求めた犬の名前とは?
11.隣人たち(ホープ・レイモンド)
(Neighbors)
……ミス・パースンズは隣家の一角が喉から手が出るほど欲しいと思っていた。持ち主はミセズ・バーガーで、彼女が死ねばその土地はミス・パースンズとも旧知のベティの相続になる。ーーーと思っていたらアメリカ暮らしの甥のものになってしまった!?
12.想い出の山(マーガレット・マロン)
(On Windy Ridge)
……わたしの姪ジュリーは、わたしの許嫁だったルークの甥のノアとの結婚を決めた。ゴードンという男をけしかけただけあってノアの真価に気付いたようだ。しかし2人が狩に出かけた時、ノアが大怪我をして帰って来た!
13.コウノトリの旅(E・ウェレン&J・バークター)
(Stork Trek)
……アニーばあさんの楽しみはコウノトリの飛ぶ姿と春に帰る姿。宝石泥棒のファルキールは額にV印をつけたコウノトリにダイヤモンド密輸の片棒を担がせるが、そのコウノトリはなかなか渡って来ない。一方アニーばあさんの孫のロエルは金の無心をして彼女を死なせてしまい、その拍子に黒い煤でコウノトリを染める……
14.神々の贈り物(ゲイハン・ウィルスン)
(A Gift of the Gods)
……レイクサイドの公園でヘンリー少年は茶色く汚い袋を拾った。その中に入っていたのはなんと動物の毛皮。どうやら着付けられるらしい。するとなんと彼にぴったりに貼り付くではないか……
15.ハンティング・ロッジの殺人(エドワード・D・ホック)
(The Problem of the Hunting Lodge)
……「サム・ホーソーンの事件簿 3」参照。
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「動物たちは共犯者」です(・∀・)
一時期本ブログでも登場した早川書房版アンソロジー・シリーズ再登場。13作目の本書は動物が登場するミステリーです。皆さんは犬派ですか、猫派ですか? 何の動物が好きですか? 動物は人語を話しませんが、自然界の生き物なのでどこか超然としています。彼らには神秘があります。彼らが人間の犯罪やサスペンスに顔を出したらどうなるか……を書いて、集めたのが本書です。パレツキー女史が「編集なんてもうやりたくない」とごねますが、どれも素晴らしい作品なのに篩い落とすって嫌ですね←
犬、猫、馬、象、豹、コヨーテ、ハムスター、豚、コウノトリ、白鳥、鹿……ペットは勿論、家畜も野生動物まで居ます。動物園も顔負けの顔ぶれです。いつだかの犯罪百貨店ならぬ犯罪動物園。犯罪の片棒を担がされた動物、標的になった動物、恐怖の具現化になった動物、人の驕りを罰する動物……色々居ます。動物たちの目の前で犯罪を犯すと貴方にも裁きの女神の鉄槌が降るかも?
「動物たちは共犯者」でした(・∀・)/
次は名前の通り、世界各地の密室を観に行きませんか? ……と言いたいところですが、すみません、先に別の作品。1ヶ月かけてやっと読み終えた、旅を終え、「森」を抜けた!(*^o^*)/