原子爆弾戦争後、世界はあらゆる制約と理から人類を解放させる。更には人間自身もーーー
◇解放された世界◇ -The World Set Free-
H・G・ウェルズ 浜野輝 訳
石炭、石油が枯渇し、原子力の開発によって大量解雇など世界経済の混乱がつづく1950年代、局地的な紛争が世界戦争へと発展。原爆投下によって大惨事がひきおこされる。そして、戦争と国家から解放された新世界秩序に基づく、人権による世界国家成立への動きがはじまる…1914年の時点で今日の核戦争の危険性を予見した思想小説。
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プレリュード 太陽を罠にかける人びと
第一章 新しいエネルギー源
第二章 最後の戦争
第三章 戦争の根絶
第四章 新しい段階
第五章 マーカス・カレーニン最期の日々
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「解放された世界」です(・∀・)
小説は小説ですが、ウェルズお得意の人類学者ウェルズの思想や学説がふんだんに盛り込まれた『思想』小説です。小説というよりは読み応えの有る論文といった体で、登場人物も居ますが、主要キャラクターの科学者ホルステン、兵士バーネットやエグバード王、最後に登場するマーカス・カレーニンはウェルズの分身であり、彼らの口からウェルズの論説が語られます。
ウェルズは世界最終戦争の話を他でも書いていますが、本書は世界最悪の発明品ともいえる原子爆弾が登場します。6日や9日にあげることにならなくて良かった……尤もウェルズはその放射能の影響をかなり甘くみていたようで戦争終了後、普通に後遺症無しで人類生きています。世界規模でやられたら誰も彼も皆死んでるよ普通……しかし本書のが描かれたのは1914年。原子爆弾がある種世界を激変させることをウェルズは30年前から予言していたわけだ。
第三章から後は戦争後の未来が描かれています。今までの法律が通用しなくなり、国境がなくなり、宗教がなくなり、もはや国一つ一つから地球規模へと発想を変えなければならない。しかし今の状況はウェルズ未来の真逆の方向に行ってしまっていますね……
私が興味深かったのは最終章です。どんなに国や思想から解放されても男と女の性からは逃れられません。しかしウェルズは男性、女性の特権や専門性を無くし、これからは「人間として」ものを考えなければならないとカレーニンを通して説きます。これ、結構来ましたね。特に今の日本は考えた方が良い。言うなれば男性に許されることは女性にも許されて、男性に許されないことは女性にも許されない、また逆も然りなのです。
現在、地球は尤も混沌化しているでしょう。いつある意味単純化されるかは分かりませんが、そんな世界が来たとき、人間で無くても良いから何か一つでも命が存在しますように……
「解放された世界」でした(・∀・)/
次はー……えっ、まさかのメグレに不適切行為!?(*^o^*)/