H・G・ウェルズ No.20.5◇トーノ・バンゲイ・下◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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全盛、意外な再会、冒険、破産、死、別れ……何かを創造し、何物も得られなかった人たちの中でジョージが失って、得たものとはーーー?

 
 

 
◇トーノ・バンゲイ・下◇ -Tono-Bungay-
H・G・ウェルズ 中西信太郎 訳
 
 
「世界文化史大系」の著者として有名な文芸批評家ウェルズは,最初この軽妙なユーモア小説によって今世紀初頭の文壇に認められた。インチキ強精剤トーノ・バンゲイを発明して巨万の富を儲ける男を主人公とした物語であるが、19世紀イギリス社会相の解剖と描写の中に科学思想を盛り,文学作品としても傑出している。
 
 
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叔父の事業は『トーノ・バンゲイ』に留まらず、家庭業にも手を広げ、あっという間に大実業家になって「ナポレオン」とまで称される。しかし権力者の常である虚栄心が差し込み、家庭生活には影が……
 
 
ジョージは飛行機業にのめり込む中、幼馴染みのビアトリスと再会する。今までの女性とは違うビアトリスにジョージは惹かれるが、叔父に助けを求められ、好物クラップを秘密裏に持ち込む為にアフリカに渡る。しかし帰ってきたジョージを待っていたのは叔父が破産したというニュースだったーーー
 
 
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「トーノ・バンゲイ・下」です(・∀・)
 
 
下巻はうってかわって栄光と没落編です。ナポレオンと謳われるようになり、彼と同じように勢力を広げ過ぎ、敵を作り過ぎてしまい、あっという間に凋落していく様が描かれています。最期の場面とか上巻には思いもよらない姿だったので読んでいて哀れになりました。叔母さんも明るかったですが、結局のところ何も手に入れることはできなかった。という点でやはり哀れです。
 
 
この話で確かに得られたと断言出来る人は誰もいません。叔父さんも叔母さんも。ビアトリスは得られる機会はあったが、自身の育ちや環境がそれを許しませんでした。ジョージに関しては失ったものも無いのですが、駆逐艦を造ろうとしているところに何か得られるものはあるかもしれません。
 
 
われわれはみな、ある隠れた使命にしたがって努力しながら、大洋のかなたに消えるまで、何かを作り、そして過ぎ去っていくのだ。
 
 
この一文はウェルズがこの作品の中で、いやもしかしたら全ての作品の中で伝えたかった世界の真理なのかもしれません。そういった意味でウェルズはやはりただのSF作家ではなく、人間学者であり、歴史学者なんですね。
 
 
「トーノ・バンゲイ・下」でした(・∀・)/ 
さぁ、受け入れる準備と祈る準備は出来ているか?(*^o^*)/