石像が動き出し、女は異界に男を誘うーーー
◇ドイツ幻想小説傑作選-ロマン派の森から-◇
今泉文子 編
石の夢・異界の女―ロマン派の森を彩る戦慄と魅惑のファンタジー! 新訳で贈るドイツ・ロマン派の傑作短篇集。
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1.金髪のエックベルト(ルートヴィヒ・ティーク)
(Der Blonde Eckbert)
……騎士エックベルトの妻ベルタが彼と友人ヴァルターに語った昔話……それは森に迷い込んだ幼い頃のベルタが自分を育ててくれた老婆に対して犯した罪だった。その直後、ベルタは病に伏して、ヴァルターも様子がおかしくなり……
2.アーデルベルトの寓話(アーデルベルト・フォン・シャミッソー)
(Adelberts Fabel)
……目を覚ましたアーデルベルトは背の高い、美しい女人から髪を結んだ指輪を遣す。そこには「意欲せよ!」と書かれていた。彼はいくつもの試練を受ける。
3.アラビアの女予言者 メリュック・マリア・ブランヴィル(アヒム・フォン・アルニム)
(Melück Maria Blainville, Die Hausprophetin aus Arabien)
……フランス語を話すアラビアの美しい女はキリスト教会の洗礼を受け、メリュックという名前を授かり、修道院に入った。その後彼女は名高い女優になったが、ある男との出会いによって彼女は不吉な予言を得るーーー
4.大理石像(ヨーゼフ・フォン・アイヒェンドルフ)
(Das Marmorbild)
……若い貴族のフローリオは旅の途中に寄った町の庭園にある大理石の女神像と宿屋のピエトロの姪ビアンカの間で揺れる。フローリオは騎士ドナーティの導きでその庭園の主人である美しい貴婦人に会うが……
5.ファールンの鉱山(E・T・A・ホフマン)
(Die Bergwerke zu Falun)
……船乗りのエーリスは航海中に母親を亡くし、船乗りを辞めようと思い悩む。其処に1人の老鉱夫が現れ、鉱夫にならないかと誘う。エーリスは今とは対極的に地底に降りることにぞっとするが、ファールン鉱山に住むウッラに恋して一転働くことに。しかしそうなると今度は老鉱夫の態度が変わって……
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「ドイツ幻想小説傑作選」です(・∀・)
私は今までファンタジーは苦手だったのですが(まともに読んだことあるのはハリポタぐらいです)最近ウィーンのことを知りたくてドイツ語圏の本を読むことが増えました。本書は皆、ドイツ圏ですが、隣国のオーストリアにも伝わっていたに違いないと読んでみました。お陰で得るものもありましたし。
ドイツ幻想小説は英国のそれとはまた全然違うことが分かります。それまでに流行った恐怖小説や怪奇小説とは一線を化し、当時の劇的な大変化を身をもって体験し、〈幻想〉ーーーメルヘンとファンタジーを武器にあるべき世界を捉えなおそうとしました。
物語はどれも現実離れしていて一見グリム童話のようなメルヒェンがありますが、少し読むとそうではなく、〈幻想〉、れっきとした〈異世界〉に我々を連れて行こうとしています。案内人は決まって女。可憐な乙女から妖美な貴婦人、そして秘密を持った女たちです。
ドイツといえば魔女と森ですが、あまり魔女は出て来ません。1と3ぐらい。2と4はセイレーンやローレライ並みに人間じゃないし。森は5以外に登場します。日本で山が怪異や幻想の舞台になるようにドイツでは森が大事な舞台です。森は人間に恵みも罰も与え、母なる懐のようです。
「ドイツ幻想小説傑作選-ロマン派の森から-」でした(・∀・)/
次は〜…………人間の黒いユーモアを見に行きませんか?(*^o^*)/