サナトリウムでカストルプ青年は「人間」と「人生」と「世界」と「生命」について考える考える考える……
◇魔の山・上◇ -Der Zauberberg-
トーマス・マン 高橋義孝 訳
第一次大戦前、ハンブルク生れの青年ハンス・カストルプは、スイス高原ダヴォスのサナトリウムで療養生活を送る。無垢な青年は、ロシア人のショーシャ夫人を愛し、理性と道徳に絶対の信頼を置く民主主義者セテムブリーニ、独裁によって神の国をうち樹てようとする虚無主義者ナフタ等と交流しながら、自己を形成していく――。
“人間"と“人生"の真相を追究して描かれた、ドイツ教養小説の最高傑作。
“人間"と“人生"の真相を追究して描かれた、ドイツ教養小説の最高傑作。
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1907年。造船技師のカストルプ青年はサナトリウムに滞在している従兄弟ヨーアヒムを見舞う次いでに自分もそのサナトリウムで療養することに。カストルプ青年はそこで色々な人たちと出会い、関わることで彼は「人間」を支配する「人生」「世界」「生命」について考え尽くす。彼に訪れたのは密やかな病と恋の影……
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「魔の山・上」です(・∀・)
コロナウィルスで大変な時世に選りに選って病気と死が隣り合わせが舞台の本を選ぶとは。仕方がない、すぐ読めるものならなんだって読んでやる! という気持ちです。とにかく人混みが懐かしいです←
さて。ドイツには「教養小説」と文学ジャンルがあります。定義としては「主人公がさまざまな体験を通して内面的に成長していく過程を描く小説」。代表作としてはゲーテの『ヴィルヘルム・マイスターの修行時代』やヘルマン・ヘッセの『デミアン』です。……文字だけ見ると日本の青春物語と似てる? と思いますが、「教養小説」の成立にはドイツ市民社会の成立と、啓蒙主義の浸透の過程でのギリシア思想の摂取がありますのでただ似てるってだけで括ってはいけないのです。
そんな訳でマン「魔の山」。本書は教養小説の中でも最高傑作と名高く上下巻共に分厚く、執筆年月は11年。カストルプ青年がスイスのサナトリウムで忍び寄る病魔に気づきながらもあらゆる思考を巡らせる話です。……が、難しい!! この人たち、議論しかしてない……小説というよりも教科書や論文読んでいる気分に……教養小説がドイツでは当たり前で今も昔も普通に読まれているならそりゃ勝てる訳が無い……すごいよ、ドイツ……しかしこの小説を読んでいると嫌でも考える思考回路が開くのでコロナショックで思考回路が麻痺した人はこれを読んで考える頭を働かせましょう← 人間は非常事態の時こそ、考えることをやめてはいけないのです。
上巻はカストルプ青年がショーシャに愛を告げてふられる(?)場面で終わります。鉛筆が暗示的だ……関係を絶たせないためにもカストルプ青年は鉛筆を返さないんじゃないかと思いますね。
鉛筆を返すか返さないか、いざ下巻へ(*^o^*)/