凪良ゆう◇流浪の月◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




TwitterもといX: 「https://twitter.com/KYoCaTHouWoR
エブリスタ: https://estar.jp/users/153193524

愛では無い。新しい感情、新しい関係。長く続く流浪の果てで2人を待つのは?

 
 

 
◇流浪の月◇
凪良ゆう
 
 
あなたと共にいることを、世界中の誰もが反対し、批判するはずだ。それでも文、わたしはあなたのそばにいたい――。実力派作家が遺憾なく本領を発揮した、息をのむ傑作小説。
 
 
☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆ 
 
 
かつて日本中を震撼させた「家内更紗ちゃん誘拐事件」。しかし小児愛者と弾劾された佐伯文との暮らしは更紗の人生の中で唯一の光だった。ところが、それを誰も何も理解してはくれなかった……
 
 
月日は流れ、レストランで働く更紗は終始好奇の目に晒され、哀れられて生きて来た。そんな中、その文とまた出逢った。決して愛情は湧かない、それはあちらも同じ。更紗は文の近くに、側にいることを選ぶが、世間と世界はそれを許そうとも理解しようともしないーーー
 
 
☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆ 
 
 
「流浪の月」です(・∀・)
 
 
本年度の本屋大賞作品です。普段はこういうのには乗らないのですが、こんなご時世、直ぐ近くの本屋に確実にあるものしか読めないのだったー!
 
 
出版社は東京創元社。いつもミステリーでお世話になっているあの東京創元社です。ミステリーやSF、ファンタジー以外も出しているというイメージがあまりなかったのですが、今回の本作がきっかけでイメージが変わると良いですね。というか最近東京創元社は良作が多いですねー。
 
 
しかも作者も意外や意外。BL作家というイメージしかなかったので逆に本作にびっくりさせられました。この人の BL作品を見かけることの方が多かったので逆にBL以外も書くんだ!? って感じでした。二重の意味で気になって本書です。
 
 
……まだ出版されて間もないのであらすじを書くのもどうかとも思ったのですが、何も無しで感想は書けないので……多分欧米だとこの手の小説は少なくないと思う。言うならばこれは被害者と加害者の図式であって誘拐でなくて重犯罪でももしかしたら成り立つかもしれない。それこそ本当に理解は得られないだろうけど……
 
 
逆に日本的だと思ったのが誤解を解かず、理解を求めないところですかね。文にしても更紗にしても2人ともに引き返せる、ーーー特に文の方にはーーー受け止めてくれる土壌があったのにそれに背を向けてしまったところに悲しさに似た重さを感じます。
 
 
そして作品に一貫するのが善意で誰も救われないところ。善意の使い方を思いっきり間違えている人しか出てこない。しかしそれは読者の私たちも同じであって責めることは出来ない。……もし自分の周りに「更紗」がいたらその人を理解するなんて出来るんだろうか。いやそれすらお節介なんだろうか。善意で救うことが出来ないなら今世紀特有の「無関心」でしか救えないのか。それは悲しくないか、寂しくないか? ……そう考えて終始読んでいただけあって終章の理解者の出現と2人歩く姿に何故か救われました。そしてこの一言に作者と、世界の真理が込められていると思います。
 
 
「彼が本当に悪だったかどうかは、彼と彼女にしか分からない」
 
 
……今や人を理解することが正しい、救いだと思われた時代は終わりに近づいているのではないか?
 
 
「流浪の月」でした(・∀・)/
次は〜……せめて本の中だけでも世界を飛び出せ!!(*^o^*)/