平野啓一郎 No.9.5◇決壊・下◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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崇は犯人だと疑われ、〈離脱者〉による模倣的惨劇は止まらない。そして遂に決着の時が来る!

 
 

 
◇決壊・下◇
平野啓一郎
 
 
〈悪魔〉とは誰か? 〈離脱者〉とは? 止まらない殺人の連鎖。ついに容疑者は逮捕されるが、取り調べの最中、事件は予想外の展開を迎える。明かされる真相。東京を襲うテロの嵐! "決して赦されない罪"を通じて現代人の孤独な生を見つめる感動の大作。衝撃的結末は!?
 
 
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俺じゃない、俺はやってない!
 
 
崇は生きている良介に最後に会った人物として事情聴取を受ける。それはやがて殺人容疑者としての尋問に変わり、佳江や母の和子ですら疑うようになり、家族が一気にバラバラになったことに苦しむ。
 
 
〈悪魔〉による犯行声明と〈離脱者〉という言葉から世界から逸脱しようとする猟奇的殺人が横行する。その中で起こった同級生殺人事件こそ〈悪魔〉と共に良介を殺害した北崎友哉の犯行だった。その直後、ブラウン管を通してフジテレビ社屋テロ事件が報道される。
 
 
罪とは、赦すこととは、人とは?
 
 
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「決壊・下」です(・∀・)
 
 
何もかもが「決壊」しています。世界も秩序も崇を含めた色々な人たちの幸福も。連続テロ、人を選ばない猟奇的な殺人、その加害者・被害者遺族を通して罪とは、赦すということはどういうことかを非常に難解な会話で語り継がれます。難しくてパンク寸前……
 
 
舞台設定が15年以上前なので今と照らし合わせるとあり得ないことも多いですが、当時はそれが普通だったと考えると小説にあることは15年以上前の「現実」だという事実に直面し、辛いけど目を背けてはいけないというプレッシャーを感じました。彼らの言葉が全て正しい、全て間違っていると断言できる自信は私には無い……
 
 
作品中で崇も語っていますが、赦しというのは世界で究極的な終わり方だと思います。今でも時々国際紛争とかで「赦して前を向いた」旨の話が出ますが、かつて憎んだ相手を赦すって物凄いエネルギーを使うと思います。それまでの間にその相手のせいで精神がボロボロになるまで切り裂かれたのに、その相手を赦すって。
 
 
世界は決壊し、この物語の誰もが救われない。死者が語りを持たないように良介の真意は永遠に分からない。その世界の不条理も含めて私たち人間は「赦す」為に生きていかなければならないのでしょう。
 
 
「決壊・下」でした(・∀・)/
……実は次も何になるか分かりません←え