平野啓一郎 No.8◇空白を満たしなさい・上◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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生き返った男、死の真相。その先に希望と再生はあり得るのか。

 
 
 
 
◇空白を満たしなさい・上◇
平野啓一郎
 
 
ある夜、勤務先の会議室で目醒めた土屋徹生は、帰宅後、妻から「あなたは3年前に死んだはず」と告げられる。死因は「自殺」。家族はそのため心に深い傷を負っていた。しかし、息子が生まれ、仕事も順調だった当時、自殺する理由などない徹生は、殺されたのではと疑う。そして浮かび上がる犯人の記憶……。
 
 
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土屋徹生は訳の分からない気持ちで病院に居た。勤め先の会社の会議室で目が覚め、帰ったら妻の千佳に「貴方は3年前に死んだ筈」だと言われたのだ。しかも原因は自殺。千佳を始めとする周りの人間はそれでかなり傷つき、辛い気持ちを抱えていたのだ。
 
 
しかし3年前といえば徹生のアイデアが成功し、子どもの璃久も生まれたばかりだ。自殺をする謂れは何処にも無い! 徹生は自分が殺されたのではないかと疑う。そうなると犯人は死ぬ前に陰湿な憎悪をぶつけてきた警備員の佐伯しか有り得ない。徹生は犯人を探すが、どうしても3年後の世界に対する違和感は拭えず、世間は生き残った人ーーー「複生者」に対して冷たいーーー。
 
 
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「空白を満たしなさい・上」です(・∀・) 続いて平野啓一郎第2弾。
まさかのSFチックな話です!? 人がいきなり生き返るってなんじゃこりゃー! きやSFを通り越してもはやファンタジー……しかし生き返りの理由は仕組みはてんで無し。あくまでも超常現象扱いなのかな。
しかしここでは実際に人が生き返ったらどうなるかをかなり現実的に書いています。戸籍も資格も失効し、その人がいなくなって空いてしまった穴は既に埋まり、下手したら邪魔者扱いされる……蘇りは祝福では無いこと、そして永久的では無いことを示唆しています。
 
 
そして生き返った主人公、徹生の死の真相を探るというミステリーが絡みます。が……
この人はつくづく純文学の畑の人だなと思いました。ミステリーというエンターテインメントが書けない、とは言いませんが無理している感があって「誰だあんた」状態。やっぱ「葬送」が一番良かったなぁ。
 
 
徹生は「生き返ってしまった」中で死んだことによって切れてしまった繋がり、生き返ったことによって再び繋がった繋がりと切れてしまった繋がりを認知します。それは前作にも出ていた「分人」という考え方や「空白を満たしなさい」の「空白」に繋がるのでしょうか。
 
 
それを下巻で確かめたいと思います(*^o^*)/