ジョルジュ・シムノン No.94◇メグレと老外交官の死◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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元外交官だった伯爵の死に潜むのはあまりにもプラトニックな愛の物語なのか?

 
 

 
◇メグレと老外交官の死◇ -Maigret et Les Vieillards-
ジョルジュ・シムノン 長島良三 訳
 
 
外務省からの突然の要請をうけて、メグレはサン=ドミニック通りに駆けつける。七十八歳の元外交官サン=ティレール伯爵の死体が自宅で発見されたのだ。発見者は伯爵に四十年来仕えてきた老女中のジャケット。伯爵は数発の拳銃弾をうけて、書斎で死んでいた。至近距離から頭部に命中した一発が致命傷で、ほぼ即死と推定される。ところが腹部になお三発の弾をうけていた。犯人はあたりに散らばった薬莢まで残らず拾い集めて立ち去っており、痕跡はまったく遺していない。十九世紀の遺物のような人物が登場し、動機も手掛りも欠いたこの状況に、メグレは困惑する。
 
 
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メグレは外務省から『責任のある人物をよこしてほしい』という要請でクロミエールという男の元に行くよう命令される。頭を捻ったメグレがそこで見たものは元外交官のサン=ティレール伯爵の遺体だった。頭に1発と腹部に3発。頭の1発か致命傷になったのは間違い無いのになぜ3発も撃ち、その薬莢を持ち帰ったのか? しかも家政婦のジャケット・ラリューはなかなか口を割らず、捜査は難航する。
 
 
サン=ティレール伯爵には永遠の恋人がいた。V公爵夫人のイザベルだ。家族も周囲も知っていたあまりにもプラトニックな恋愛が発端なのか? やがてパラフィンテストでジャケット・ラリューに陽性反応が出た。ジャケットは家政婦であると同時に伯爵の愛人だったのか。それとも……
 
 
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「メグレと老外交官の死」です(・∀・)
 
 
上流階級に切り込みます。しかも相手は伯爵家。後からはフランス史に名を残す公爵家も出てくるので正真正銘の貴族です。……フランスの貴族は爵位を継承してもきちんと役職に就くんですね。
 
 
この話の主軸はあまりにもプラトニック的な恋愛です。お互いがお互いを真に愛していたのに結ばれなかった二人。イザベルの夫、子どもですら知っていた、了解付きの不貞ーーーと言いづらい愛。伯爵も死にますが、公爵もなんと馬から落ちて死んでしまうのでイザベルは悲しいかな、永遠に公爵家に縛られることになります。サン=ティレール伯爵の住まいを公爵家のイザベルの部屋に移す行為は狂信的なものを感じます。此処まで来ると悲しくなります。
 
 
例えば本格ミステリだったらその恋愛を主軸にした愛憎劇になりそうですが、全くそうはならないところがシムノンだったりします。しかも事件真相の鍵を持つのは家政婦のジャケットだったりします。ジャケットはイザベルと違って長年一緒に住んでいたので彼女はイザベルよりも愛人らしかったのかもしれません。しかも彼の死の行方をひたすら心配する訳ですから……伯爵は最終的に二人とも遺して逝くのである意味二人とも伯爵の全てを理解できた訳では無かったのですね……
 
 
「メグレと老外交官の死」でした(・∀・)/ 
次は一方変わったものを収集する妙な人間の話です(*^o^*)/