ジョルジュ・シムノン No.88◇メグレとかわいい伯爵夫人◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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上級社会の人々もメグレたちと同じように弱さと悲しさを持つーーー

 
 
 
◇メグレとかわいい伯爵夫人◇ -Maigret Voyage-
ジョルジュ・シムノン 江口亘 訳
 
 
パリの豪華ホテル《ジョルジュ・サンク》の自室で睡眠薬自殺をはかった伯爵夫人。未遂におわり、病院に収容された。翌朝、同じ階で、イギリスの大富豪ウォードの死体が浴室で発見された。事故を装った犯行で、入浴中に何者かに頭を押さえつけられ、水中で窒息死させられたらしい。メグレは直ちにこの事件を自殺未遂事件と結びつけ、病院に部下をやるが、伯爵夫人はすでに病院を抜け出したあとだった。彼女がオルリー空港からニースに向かったことが判明し、メグレはすぐあとを追う……。
 
 
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その事件自体はありふれたものだった。自殺しようと大量の睡眠薬を飲んだが、その最中で気が変わり、「死にたく無い」と電話で訴えた女。そのバルミエリ伯爵夫人は間一髪のところで命を取り止め、病院に運ばれた。それだけのことだった。ーーー翌朝そのホテルでウォード大佐と呼ばれる男が事故に見せかけて溺死していなければ。
 
 
事件の捜査指揮を執ることになったメグレは自殺未遂をしたバルミエリ伯爵夫人ーーーかわいい伯爵夫人と呼ばれる彼女とウォードが愛人同士と知ったメグレは部下のリュカを病院に向かわせるが彼女はそこにいなかった……
 
 
メグレはかわいい伯爵夫人の足取りを追い、飛行機に飛び乗る。かわいい伯爵夫人、その前夫のベルギー人富豪、前々夫のバルミエリ伯爵、ウォードの友人、ウォードの前妻……最初は上級社会の風習や人々の性格に戸惑うが……
 
 
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「メグレとかわいい伯爵夫人」です(・∀・) 実に久しぶりのメグレです。
 
 
さて、今回の舞台はパリの最高級ホテル。容疑者もその利用者なので金の有無はともかくとして社会的地位と知名度はメグレが捜査する事件では珍しいです。関係者ももちろんその階級の人間たちです。人間関係も複雑で上級階級の人たちも上級階級に属するならではの人間の悲哀を抱えています。
 
 
シムノンの作品全部に言えますが、読んでいて明るさや生気を全然感じないんですね。彼らは彼らなりに悲哀を抱えているので明るさはともかくとして生気を感じないというのは……私たち読者の目の前に居たのは人生にすごく疲れ切った人たちだったのです。 余計にホテル《ジョルジュ・サンク》やニースの豪奢さが虚しく見えます……
 
 
「メグレとかわいい伯爵夫人」でした(・∀・)/  
さて、これで2019年度の読書は終わりです。2010年初はホックです(*^o^*)/