ジュール・ヴェルヌ No.26◇アドリア海の復讐・上◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




TwitterもといX: 「https://twitter.com/KYoCaTHouWoR
エブリスタ: https://estar.jp/users/153193524

自分たちを密告した裏切り者を断罪せんために死の淵から生還せよ!

 
 
 
◇アドリア海の復讐・上◇ -Mathias Sandorf-
ジュール・ヴェルヌ 金子博 訳
 
 
1867年、オーストリア帝国の支配下、祖国ハンガリーの独立をめざしてひそかに活動していたサンドルフ伯爵は、裏切り者の密告により、財産を奪われ、同志ザトマール伯爵、バートリ教授とともに牢獄につながれた。雷鳴とどろく夜、脱獄を決行するも失敗、同志ふたりは殺され、自らも追い詰められて海の藻屑と消えた─15年後、地中海をまたにかけた復讐劇は幕を開く……”巌窟王”を凌ぐ傑作、登場!
 
 
☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆
 
 
悪党サカトニーが拾った手紙はオーストリア帝国からの独立を試みて動き出そうとしているサンドルフ伯爵宛の手紙だった。その手紙を拾われて銀行家のトロンタルに密告の協力を持ちかけたのが運の尽き。果たしてサンドルフ伯爵と友人で仲間のザトマール伯爵、バートリ教授は逮捕され、パジンの牢獄に送られた。
 
 
三人には手紙を盗み読みした人物に心当たりはなかった。が、天の助けが三人に密告者を教えてくれた。三人は脱獄を試みるがザトマール伯爵は逃げ遅れてしまう。さらに逃げ延びたロヴィニという港町でバートリ教授も囚われ、サンドルフ伯爵は海の藻屑に消えてしまった……
 
 
15年後。ダルマチア地方のラグサという町にアンテキルト博士という金持ちの名士だが、謎の多い医師がやって来た。どうやらこの男はハンガリーのために死んだバートリ教授らの知り合いで未亡人に多額の援助をしていたようだ。このアンテキルト博士とバートリ教授の息子ピエールが出逢い、そのピエールがトロンタルの娘サヴァと愛し合っていることを知った時……すでに復讐の歯車は回っていた!
 
 
☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆
 
 
「アドリア海の復讐・上」です(・∀・)
 
 
本書は小アレクサンドル・デュマと出逢い、第アレクサンドル・デュマの名作「巌窟王」に捧げて書かれたと言われています。つまり「巌窟王」的ロマンですね。
 
 
言い換えれば「巌窟王」を知っていた方が恐らくより楽しいのですが、私は未読なので純粋にこの話をオリジナルとして読んでみました。
19世紀中頃。オーストリア帝国は斜陽の気配もありましたがまだ勢力は強く、ハンガリーはなんとか独立しようと奮闘していました。主人公はそんな革命家の一人です。オーストリアからしてみれば脅威以外の何者でもないし、まぁ、見つかったら確かに投獄ものだよなー……と思ったり。サカトニーらはてっきりイアーゴ的悪役だと思っていたのでそこだけなんかなー……と。
 
 
第2部はガラリと変わって15年後のラグサという町。選りに選ってそんなに大きくない町に主要キャラが全員揃ってしまうという奇跡← 謎の男アンテキルト博士に「ロミオとジュリエット」並みの恋愛が絡み、そこでアンテキルト博士の正体が垣間見得ます。いつものヴェルヌは恋愛を応援するのにー。うわー、ピカレスクロマンですねー。ラスト間近「ヴェルヌらしくない!」と悲鳴をあげましたがラストのラストで「やっぱりヴェルヌだったー」と安堵しました。
 
 
その理由は下巻で分かります。いざ下巻!(*^o^*)/