ジョルジュ・シムノン No.69◇ベルの死◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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「ベル」という1人の女の死が男の薄暗い内面を露わにしていく……

 
 
 
◇ベルの死◇ -La Mort de Belle-
ジョルジュ・シムノン 峯岸久 訳

 

 
美しいベルを殺したのはだれか? すくなくともスペンサーではなかった。昨夜、ベルが映画から帰ってきて挨拶しに顔を見せたとき、彼は趣味の轆轤まわしに夢中になっていた。ベルの顔は思いなしか悲し気に蒼ざめていたような気もするが、元来彼女はこの家の家族ではなかったので、大して気にもとめず、再び仕事に没頭していったのだ。スペンサーではなかった……。が、警察も医師も妻さえもが彼を疑っていた。証拠も彼にとって不利だった。ベルをごく普通の若い娘だと思っていたスペンサーは知らなかったが、ベルには何人もの男友達がおり、しかも殺された晩にはしたたかに酒を飲んでいたという。スペンサーにはびっくりすることばかりだった。そして、とんできたベルの母親の言葉。「穢したいという欲望さ……」次第にスペンサーの内に、ある考えが頭をもたげてきた。現代人の心の底に隠された自分にさえ見定められない秘密。ベルという一少女の死をきっかけに、一人の中年男の心の謎が解き明かされていく様を鮮やかに描く。
 
 
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「ベルの死」です(・∀・)
ここまであらすじが詳しく書かれているとここで書くことないのでいきなり作品解説に行きます。決して手抜きではありません←
 
 
後書きにも書いてありますがこれは決して犯人当てミステリーでは決してありません。この話の主軸は同居していた娘の死による娘の本性と主人公アシュビィの心の内面です。
 
 
アシュビィは同居していた大して興味もなかった娘ベル殺しの容疑者になってしまいます。家にいたのは表面的にはアシュビィだけですから。状況は明らかに不利で周囲の人間はアシュビィを疑います。堅実な妻クリスティーンさえも。そのクリスティーンの言動は風に吹かれる落ち葉並みに不安定です。
 
 
調べるに連れてベルが酒を飲み、男と関係を持ちたがる不良娘であることが分かります。その事実とベルの母親の「穢したいという欲望さ……」と言葉が彼の内面を明らかにし、ある事実を示唆していきます……その様子が幻燈のように朧げに、しかし次々と浮かび上がる様が恐ろしいです。
 
 
「ベルの死」です(・∀・)/
次は食事のパンが犯罪の道具に!?(*^o^*)/