カズオ・イシグロ No.4◇夜想曲集-音楽と夕暮れをめぐる五つの物語-◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




TwitterもといX: 「https://twitter.com/KYoCaTHouWoR
エブリスタ: https://estar.jp/users/153193524

夕暮れに流れる音楽が人と人との間にドラマを作る。

 
 
 
◇夜想曲集-音楽と夕暮れをめぐる五つの物語-◇ -Nocturnes, Five Stories of Music and Nightfall-
カズオ・イシグロ 土屋政雄 訳
 
 
ベネチアのサンマルコ広場で演奏するギタリストが垣間見た、アメリカの大物シンガーの生き方を描く「老歌手」。芽の出ないサックス奏者が、一流ホテルの秘密階でセレブリティと過ごした数夜を回想する「夜想曲」など、書き下ろしの連作五篇を収録。人生の夕暮れに直面した人々の悲哀と揺れる心を、切なくユーモラスに描きだした著者初の短篇集。
 
 
☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆
 
 
1.老歌手
  (Crooner)
  ……私は特定のバンドに属さないギタリストだ。ある春、外で演奏をしていた私は往年の歌手トニー・ガードナーを見かける。私は感動して話しかけ、妻のリンディとも知り合う。ある日トニーは私に頼みごとをする……
 
 
2.降っても晴れても
  (Come Rain or Come Shine)
  ……僕とエミリの共通の趣味はアメリカの古いブロードウェイソングである。そんな彼女は僕の1番の友人チャーリーと結婚した。僕はある時、そのチャーリーのところに泊まりに行き、最近仲が上手くいかないエミリとの仲を取り持ってほしいと頼まれて……
 
 
3.モールバンヒルズ
  (Malvern Hills)
  ……僕は「作曲をする」が故にあちらこちらで敬遠されるギタリストだ。鬱憤した僕は夏を姉夫婦のモールバンヒルズのカフェで過ごすことになり、そこでスイスから来た夫婦と出会う……
 
 
4.夜想曲
  (Nocturne)
  ……芽の出ないサックス奏者スティーブは整形手術を施し、一流ホテルのオフリミット階で過ごすことになった。そこでなぜかセレブリティのリンディ・ガードナーにお呼ばれされた挙句"秘密の冒険"をすることに!?
 
 
5.チェリスト
  (Cellist)
  ……《ゴッドファーザー》を演奏した時、わたしは彼、ティボールに気がついた。7年前、チェリストだった彼とわたしたちは仲間だった。それが変わったのはアメリカ人女性のエロイーズに会って個人レッスンを受けるようになってからだ……
 
 
☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆
 
 
「夜想曲集」です(・∀・)
音楽と夕暮れ時と人間の出会い(または再会)の3つのテーマを主軸にした5作が入ったイシグロ氏初の短編集です。かつて音楽をやっていたわたしには溜飲ものの短編集です。
 
 
どの作品もその3つを通して過ぎ去って2度と戻らない過去への郷愁、男女の切なさ、人間とは、音楽をやる才能とは、が切なくピリリとした後味で書かれています。1はイシグロ作品の共通項ですよね。どの作品にも過去への郷愁が滲み出ています。こういうのって下手するとわたしが1番嫌いな「昔は良かった」系になるんですが、そうじゃないから不思議だ。多分そうならないのは語るのが良い思い出だからで無いからでしょう。
 
 
今回、後書きが結構胸にくるものがあったのでそれは自分の目で読んでほしいのでここでは書きませんが←、1つだけ。
どの作品にも「じゃあ、明日からまた頑張るか」と思える背中を押してくれる重さがあります。明日に、次に何が待っているか分からない。希望が待っているのか、絶望が待っているのか。それともまた別のものなのか、それでも時間は止まらないし、人間は何もしないというわけにはいかない。イシグロ作品の登場人物は全員、立ち止まって足掻いているイメージですが、1歩踏み出す勇気をくれるのがイシグロ作品の隠れた魅力なのかもしれません。
 
 
「夜想曲集」でした(・∀・)/
次はメグレと消えた死体をめぐる冒険です(*^o^*)/