H・G・ウェルズ No.9◇イカロスになりそこねた男◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




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SFのウェルズとSFではないウェルズ。

 
 
 
◇イカロスになりそこねた男◇ -Filmer-
H・G・ウェルズ 橋本槇矩・他 訳
 
 
人類初の飛行マシンの悲劇。ライト兄弟の動力飛行成功に先立つ予言的な表題作をはじめ、怪奇・幻想・SF・メルヘンなど、めくるめくウエルズ・ワールドを堪能させる10作品を精選。本邦初訳多数収録。
 
 
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1.ウォルコート
  (Walcote)
  ……クリスマス・イブ。ハリー・ウォルコートは去年のクリスマス・イブに失踪した。友人のクロード、ヴィッツリーがウォルコート邸でその話を持ち出すと従兄弟のエドウィンの様子がおかしくなり……
 
 
2.ある無情な恋物語
  (In the Modern Vein an Unsympathetic Love Story)
  ……詩人のオウブリ・ヴェールは妻がありながらミス・スミスと恋に落ちた。しかし2人の愛は人の知ることになる。オウブリが出した結論とは……
 
 
3.美しい服
  (The Beautiful Suit)
  ……母親に美しい服を仕立ててもらった男。男はとても喜んでこの服で色々な場所に出かけ、色々な人たちと話をしたかった。しかし母親は「いけません」と許さない。気持ちが高じた男は夜中にこっそりその服を着て出かけていった……
 
 
4.空中飛行家
  (The Argonauts of the Air)
  ……モンソンという男は空飛ぶ機械を開発中だ。しかしそれはなかなか成功せず、世間は彼を嘘つき呼ばりする。やがてある令嬢の一言できっかけでモンソンは部下や従業員の制止を振り切って最初の飛行を試みた!
 
 
5.世界終末戦争の悪夢
  (A Dream of Armageddon)
  ……ある青白い顔の男と電車で乗り合わせたわたし。その男は自分が他の人間になって別の時に別の場所で生きる夢を断続的に見ていたのだ。その男はその夢では南の国の有力者だったが、恋のために財産と地位を捨てたのだが、そこに彼の反対勢力が戦争を仕掛け……
 
 
6.イカロスになりそこねた男
  (Filmer)
  ……フィルマーは飛行機の発明に成功し、その製造を取り仕切っていたが、その初の人物搭乗飛行機の第1号になることはあまり念頭においていなかった。というよりも考えていなかった。しかし恋するフィルマーは飛行機の乗ることになってしまい、緊張が度を越して……
 
 
7.ダチョウの売買
  (A Deal in Ostriches)
  ……パディシャという男のターバンについていたダイヤモンドをダチョウが飲み込んでしまった。ところがそのダチョウは他のと混ざってしまい、どれがそのダチョウかわからなくなってしまった。パディシャはなんとかダイヤモンドを取り戻そうとするが!?
 
 
8.芸術崇拝
  (The Devotes of Art)
  ……アレックはアイデアに詰まって妻のイザベル自身にもピアノにもイライラする有様。そこに悪魔がやってきてアレックに失われた霊感を与えるが!?
 
 
9.消えた旧人類
  (The Grizzly Folk)
  ……はるか昔、という言葉が陳腐に聞こえるほど昔のネアンデルタール人とクロマニヨン人の闘い、そしてネアンデルタール人の滅亡はこうして起こった。という1人の人間の想像。
 
 
10.ウェイドの正体
   (Wayde's Essence)
   ……ウェイドという人間は今こそ仕事も私生活も充実し、豊かな才能を持ち、勝利を手中に収めて当然という認識をされているが、18年前まで彼は落伍者だった。それをマニングトリーという友人からもらった『成功の水』のおかげで脱したわけだ。ところが……
 
 
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「イカロスになりそこねた男」です(・∀・)
 
 
ウェルズというと「モロー博士の島」「タイムマシン」といった空想と最新科学や超現象を駆使して世界と世間に静かに警鐘を鳴らすシビアなSF作家というイメージでしたが、読んでいるうちに意外にSF以外でも多作だということが分かってきました。新発見!
 
 
1や7はミステリーの小品ですし、2と3と5と8はなんともまぁ、メルヘンと幻想が溢れた作品。ファンタジーに片足突っ込んでます。4、6は「人類初の飛行機を飛ばす」という共通てのテーマを扱った作品で4の方が飛行機そのものに焦点が当てられ、後者の方は飛行機乗りの心理状態が鍵です。人間の心理に焦点を当てた作品は10もそうです。後味の悪い作品です。
ウェルズは作家であると同時に歴史学者でもありました。そういった本を何冊も書きました。9はその面が生きた作品でもあります。学術書の抜粋みたいだ……
 
 
「イカロスになりそこねた男」でした(・∀・)/
次はカズオ・イシグロ氏の初の短編集です!(*^o^*)/