イタリアの老人が実業家を殺したのはなぜか?
◇コリーニ事件◇ -Der Fall Collini-
フェルディナント・フォン・シーラッハ 酒寄進一 訳
新米弁護士のライネンは、ある殺人犯の国選弁護人になった。だが、被害者がライネンの亡くなった親友の祖父だったと判明する。知らずに引き受けたとはいえ、少年時代の恩人を殺した男を弁護しなければならない──。苦悩するライネンと、被害者遺族側の辣腕弁護士が法廷で繰り広げる緊迫の攻防戦。そこで明かされる事件の驚くべき背景とは。刑事事件弁護士が描く圧巻の法廷劇!
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67歳のイタリア人コリーニがお金持ちの実業家ジャン=バプティスト・マイヤーを殺害したーーーこれがコリーニ事件の全貌だ。新米弁護士ライネンはこのコリーニの国選弁護士になった。しかしコリーニは完全に黙秘を貫く。
その直後、ライネンは亡くなった親友フィリップの姉ヨハナから電話を受ける。なぜか怒っている。どうしてあのイタリア人の弁護を引き受けたたのかとーーー殺されたマイヤーの通り名はハンス・マイヤー。コリーニは少年時代の恩師を殺した男だったのだ!
恩人を殺され、まともに弁護できないと辞退を考えるライネンを辣腕弁護士マッティンガーをはじめとする人間が諭す。しかし肝心のコリーニは全く何も話さない。そもそも動機が分からないと故殺か謀殺か決定もできない。警察からの報告書も何度も見直したが分からない。その時写真から光明を見出す。そこにあった真実はドイツが背負って来た闇、法律の落とし穴、それが生んだ無慈悲な事実だったーーー!
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「コリーニ事件」です(・∀・)
シーラッハ第3弾。初の長編。
計らずも少年時代の恩師を殺害した男の弁護を引き受けてしまった新米弁護士の話です。といってもその感情はあまり描かれていなく、1番の焦点はやはり弁護士ライネンの奮闘です。全く口を割らない容疑者コリーニを相手に警察からの報告書を頼りに推理していきます。「なぜ殺したのか? なぜ殺されたのか? 今まで善良な市民として暮らしていたのに?」と被害者、容疑者共に理由を問う「Whydunit」ものです。
ライネンがある写真から藁にも縋る気持ちで引っ掴んだ真実はドイツならではの重罪でした。もはやこの一言だけでも真相を語っているような……そしてその取り調べに関して抜け穴を作ってしまった法律の矛盾……これらがシーラッハならではの淡々とした、少しずつしかし確実に迫り来るような文章で書かれています。ドイツってその案件に関しては罪の大小問わずに有罪にすると思っていたんですが、違ったんだな……あと本書がきっかけでドイツは新しい委員会が立ち上がったそうです。文章の力は偉大なり。
これを読んでいて思ったのは、罪は永遠に自分を追いかけてくるということ、罪から逃れることは絶対にできないということ、罪は永遠に償われないということ。です。だから最後のヨハナの問いには「そうなんでしょう」と答えるべきだし、少なくともわたしはそう答えたい。
「コリーニ事件」でした(・∀・)/
次は「探偵小説」そのものを語っていきます!(*^o^*)/