H・G・ウェルズ No.6◇アン・ヴェロニカの冒険◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

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女性として自由を求め、闘うアン・ヴェロニカを待っていたものとは?

 
 

 
◇アン・ヴェロニカの冒険◇ -Ann Veronica-
H・G・ウェルズ 土屋倭子 訳
 
 
婦人参政権運動の嵐が吹き荒れる20世紀初頭のロンドンに飛び込んだ女子学生アン・ヴェロニカをみずみずしい筆致で描く、H・G・ウェルズの青春小説。
 
 
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知的で独立精神の強いアン・ヴェロニカは友人に招待された仮面舞踏会の招待を巡って保守的な父親に閉じ込められたことをきっかけにロンドンに出奔した。しかしそこでアン・ヴェロニカは女性である。という現実を思い知らされ、結局男性の力が無ければままならないことに苛立ちを隠せない。婦人参政権運動に参加して逮捕されたりする中で女性の自由を考える。
 
 
自分に惹かれるラミジもマニングも真に自分を理解してくれた訳ではなかった。ラミジは欲望の対象でしか、マニングは体裁と契約でしか彼女を見ていなかった。アン・ヴェロニカはやがてケイプスというイムペリアル・コレジで教鞭をとる男に恋する。しかしケイプスは離婚訴訟を起こされた妻帯者で……2人の選んだ結末はーーー
 
 
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「アン・ヴェロニカの冒険」です(・∀・)
 
 
SF作家の側面が強いウェルズですが、純文学も書いていまして本書はその1冊です。伝統と保守のヴィクトリア王朝時代から激動と革新のエドワード王朝時代、女性の存在意義、結婚と恋愛の意義を説いています。
主人公はアン・ヴェロニカというカレッジで比較解剖学を学ぶ元祖理系女子←、男性に庇護され、束縛されるのを嫌い、「1人の人間として」生きたいと願う独立精神の強い女性です。
 
 
ですが、彼女は所詮良いところのお嬢さん。現実というものがどういうものかを分かっていません。世間がアンをどう見るか、男性がアンをどう見るか、ロンドンでいやというほど思い知らされることになります。というか彼女、なかなか衝動的なのであまり後先を考えないというか無謀というか、後悔が多いです。頭が良いようで世間知らずなところは結構苛々させられます。あとこの時代から「男女間の友情はありえるか?」問題はあったんだな……
 
 
前半は女性の権利と自由の問題、後半は恋愛の問題が語られています。というか前半の要素は終盤に近づくにつれ薄れ、エピローグな最終章ではすっかりアンは家庭の主婦になっています。行き着くところは安定の場所なのです。相手は自分の選んだ人ですが。この先も仲睦まじくやっていけるか、それとも一種の倦怠感を抱えるかは分かりませんが、
どちらにしても幸多い未来であれば良いなぁと思います。
 
 
「アン・ヴェロニカの冒険」でした(・∀・)/
電話から救いの声をかけられて!?(*^o^*)/