長谷川郁夫◇編集者 漱石◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

9年間の海外古典ミステリ読破に終止符を打ちました。

これからは国内外の多々ジャンルに飛び込みます。




TwitterもといX: 「https://twitter.com/KYoCaTHouWoR
エブリスタ: https://estar.jp/users/153193524

「文豪」夏目漱石のもう1つの側面!

 
 

 
◇編集者 漱石◇
長谷川郁夫
 
 
編集感覚に優れた正岡子規と親交を結んだ漱石は、わが国最初の装幀家・橋口五葉を育てあげ、さらには朝日新聞文藝欄の編集者として精力的に活動する。寺田寅彦、鈴木三重吉、中勘助、野上彌生子、志賀直哉など多くの作家を登用、新たな文学の展開に大きく寄与した。編集者という新たな視点から漱石を捉える画期的評伝。
 
 
☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆☆*:.°. .°.:*☆  
 
 
「編集者 漱石」です(・∀・)
久しぶりに専門書を読みました。分厚い上に2段文章で5日もかかってしまいました、すみません。
 
 
夏目漱石といえば文豪として最初に思いつく小説家で日本人のほとんどは教科書やらなんやらで絶対に読んだことのある文豪です。その一方で夏目漱石は優れた編集者でもあり、芥川龍之介や中勘助らは夏目漱石という敏腕編集者の下、作家として世に登場しました。
改めて夏目漱石の顔の広さに驚かされました。漱石が生きた時代の小説家、文人で漱石と関わらなかった人なんていないのでは?
 
 
本書はそんな「編集者」という一面から漱石の人生をたどっていくものなのですが、漱石の人生における正岡子規の存在感が凄い。元来編集能力に優れた正岡子規の交流なくして夏目漱石はあり得なかった。……というかその交流の濃さが物凄い。友人という類ではない。もはや魂の半身です。漱石の小説家、編集者人生にはいっつも子規がいてその思い入れの強さに涙が出そうです。
 
 
涙といえば「我輩は猫である」の名付け親(?)高濱虚子の最期の対面の「有難う」に泣けました。虚子が小説を書くことを勧めなかったら「小説家」夏目漱石はおらず、また「編集者」夏目漱石が活躍できる場所はなかったわけでこの「有難う」にどれだけの感謝がこもっていたのだろうと思うと涙腺崩壊ものです。
 
 
……彼の小説は、小説において何かを発見しようとすることによって成立するものではなく、彼がすでに所有している現実理解の何かを、あたうかぎり明瞭に精緻に、あたかも一つの生ける図さながらであるように、図示しようとするところに成立する、とそう考えられた。この二つのでは、微妙にだが本質的に小説が違ってくる。
(第七章 「東京朝日新聞」文藝欄より)
 
 
漱石の文学には新しい世界と未知への冒険はないけど、既に見聞きし、見知っている、例えば自己に潜在する何かへの理解と探求があります。それもある意味冒険ではあるのですが。自己やその周りの他人に焦点を当て、合理的な理解を小説に書こうとしたところが「人間」を見つめ、その「小説」を導いた、夏目漱石の「編集者」にも活かされたのだと思います。
 
 
夏目漱石は日本近代文学において、歴史の先駆者になったのです。
 
 
「編集者 漱石」でし(・∀・)/
次はまた通常運転、シムノンに戻ります(*^o^*)/