小栗虫太郎◇日本探偵小説全集 6 小栗虫太郎集◇ | 星よりも大きく、星よりも多くの本を収納する本棚

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奇々怪界、暗黒と混沌、澱んだ音楽の流れる黒死館へようこそ……

 
 

 
◇日本探偵小説全集 6 小栗虫太郎集◇ -The Great Detective Stories of Japan-
小栗虫太郎 
 
 
傑作中編「完全犯罪」で彗星の如きデビューを飾った鬼才・小栗虫太郎。本巻には小栗の創造した名探偵法水麟太郎ものの代表作、「後光殺人事件」「聖アレキセイ寺院の惨劇」「オフェリア殺し」そして無論のこと、わが国探偵小説の歴史上、最大の奇書とも評される畢生の大長編『黒死館殺人事件』を収録した。中島河太郎編の著者略年譜を付す。
 
 
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1.完全犯罪
   ……ザロフ率いる苗族共和軍の一行は道中、ローレル夫人の八仙寨に泊まることになった。ところが、軍の娼婦ヘッダが部屋に侵入した何者かによって殺されて!?
 
 
2.後光殺人事件
   ……普賢山劫楽寺の住職胎龍が数珠をかけて合掌したまま、端座したまま殺された。その寺では数ヶ月前、仏像から後光がさすという奇跡が起こっていた。検事支倉に呼ばれた法水麟太郎が事件に挑む!
 
 
3.聖アレクセイ寺院の惨劇
   ……かつて白系ロシア人の居城であった聖アレクセイ寺院に今もなお、唯一住んでいる老ラザルフの遺体が見つかった。定時以外に鳴った鐘に変事を予感した支倉と呼ばれた法水らが遺体を発見し、事件解明に乗り出す。
 
 
4.黒死館殺人事件
   ……降矢木家の屋敷は皮肉を込めて「黒死館」と呼ばれている。その屋敷は門外不出の弦楽四重奏団をかこっているが、そのメンバーの1人が殺された。事件解明に乗り出すのは法水麟太郎。ところが、この事件は法水を悩ませるほど奇々怪界な事件だった……
 
 
5.オフェリヤ殺し
   ……法水が執筆した劇「ハムレットの寵妃」。法水自らが主演したこの劇の最中、地震のような振動し、オフェリヤを演じた幡江が他殺体で見つかった。これは家族を含め劇団員全員に裏切られ、絶望した風間九十郎の仕業なのか!?
 
 
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はい、10月初にして超久しぶりの「文豪ストレイドッグス制覇計画」です、お待たせしました。
13巻の終わりは「共喰い」戦は決着がつきましたが、それに対するドストエフスキーが嫌がらせと称しまして国木田さんを無実の罪で拘留させるよう仕向けます。それに立ち向かうは武装探偵社の要、江戸川乱歩。
 
 
乱歩さんはドストエフスキーは懐刀として情報を操作する「隠滅屋」がいることを突き止めます。途中好敵手のポオくんも加わり、2人はその「隠滅屋」が目の前で飛び降り自殺をはかるのを目撃します。ところがそれも「隠滅屋」の偽装工作だと見抜いたーーーが、乱歩から出た言葉は「なにも、わからない」
 
 

 
イェーイ、「小栗虫太郎」の登場です。犯罪者にして「隠滅屋」にして異能者、ウーパールーパーみたいな生命体を召喚させて犯罪の証拠を消滅させる【完全犯罪】という異能の持ち主です。犯罪者なら誰でも欲しがる能力です。彼の能力系統は事実が変わってしまう【現実改変】系でこれまた珍しい能力です。
 
 
虫太郎は昔はある組織によって囚われていましたが、ドストエフスキーらに勧誘され、複数の条件と逃亡資金を約束させて作戦に乗り出します。
……このある組織なのですが、ポートマフィアなのではないか? と思われる節があります。それは「虫太郎の【完全犯罪】が解かれたことで太宰のマフィア時代の犯罪が浮き彫りになってしまった」というところです。虫太郎はずっと囚われ身でしたが、そこがポートマフィアだったのでは? 9巻でドストエフスキーはポートマフィアにわざと捕まりますが、狙いは幹部らの異能を掌握することだけじゃなかったようです。
 
 
虫太郎は余命幾許もない作家の友達の願いを叶えるために「殺人」を犯しますが、乱歩さんには及ばず、自首します。しかしそこで新たな刺客に拉致され、乱歩さんと武装探偵社に忠告するのですが……それが14巻のラストと15巻に行き着くわけです。非常にヤバい顛末です。国木田さんは生きているのか、与謝野先生と森先生の因縁とは? そして4人の「猟犬」共から逃げられるのかーーー!?
 
 
そんなわけで本物の「小栗虫太郎」に入ります。
 
 
小栗虫太郎(1901〜1946)は本名、小栗栄次郎。会社勤めや印刷所を経営しながら小説を書き、1933年に古賀三郎の推薦で「完全犯罪」を発表しました。
 
 
小栗虫太郎といえばあれですよね。黒死館殺人事件ですよね。夢野久作の「ドグラ・マグラ」、中井英夫の「虚無への供物」と並んで日本三大奇書と呼ばれる摩訶不思議な本です。
確かに分からない。西洋のあらゆる学問が特殊ルビで書かれていますが、殺人の実行も推理も非現実的過ぎる。あらゆる見立てになる文献も登場し、わたしたち読者を煙に巻きます。また自動人形をはじめ、不思議で不気味な小道具もたくさん登場します。ディクスン・カーかよ……
惨劇の舞台、黒死館も門外不出の弦楽四重奏団は魔窟と澱んだ、死んだ宝石です。それそのものが死、みたい。
 
 
小栗虫太郎はどうやらヴァン・ダインを手本にしたようで探偵法水はまんまファイロ・ヴァンスだし、検事の支倉、警察の熊城はまんまマーカスとヒースです。うわ、懐かしい名前……← 法水の学問と学識をひけらかし、引用癖もそっくりです。これは当時から言われたことで坂口安吾は批判しています。勿体ぶったところが嫌だって言ってたもんなぁ……
法水は何作かの短編に登場します。劇場の殺人ってやはり魅力的ですよね。
 
 
異能の元ネタ「完全犯罪」はロシア系のザロフという人物が探偵役です。なるほど、だからドストエフスキーと関わるのかと思いました。よく考えてるな……
 
 
「日本探偵小説全集 6 小栗虫太郎集」でした(・∀・)/ 
次はメグレ、海を渡る!?(*^o^*)/